第10回金沢創造都市会議

金沢創造都市会議2019 >全体会議

全体会議

■全体会議 12月6日

進    行: 福光松太郎(金沢創造都市会議開催委員会会長兼実行委員長)
ゲ ス ト: 山野之義 氏(金沢市長)
(50音順) 板橋史明 氏(日本政策投資銀行北陸支店長)
       上村章文 氏(地域創生プラットフォーム代表、総務省自治大学校客員教授)
太下義之 氏(文化政策研究者、独立行政法人国立美術館理事)
岡 達哉 氏(金沢星稜大学教授)
小林茂樹 氏(国土交通省観光庁外客受入担当参事官付課長補佐)
坂本英之 氏(金沢美術工芸大学教授)
ミツエ・ヴァーレイ氏(ハワイ州観光局日本支局長)
開催委員会: 浜崎英明(金沢経済同友会代表幹事)
      砂塚隆広(金沢経済同友会代表幹事)
      米沢 寛(金沢創造都市会議開催委員会実行副委員長)
鶴山庄市(金沢経済同友会副代表幹事)
清水義博(金沢経済同友会理事)
林 隆信(金沢経済同友会理事)
松田光司(金沢経済同友会理事)
今井宏和(金沢経済同友会監事)
浅田久太(金沢経済同友会常任幹事)














(福光) 昨日は長時間にわた(福光) 昨日に引き続きまして、2日目の全体会議に入らせていただきます。今日は、山野市長にお越しいただいておりますし、県の方、市の方、そして同友会の会員の方、その関係の方々、本当にありがとうございます。
 冒頭、私から昨日のまとめを5分程度でさせていただきたいと思います。今回は、セッション@が「にぎわい創出を考える〜都心軸の活かし方〜」、セッションAが「指定管理者制度〜金沢方式を探る〜」、セッションBが「持続可能な観光〜観光マネジメントの必要性〜」と題して討議していただきました。
 セッション@「にぎわい創出を考える〜都心軸の活かし方〜」では、進行役は鶴山副代表幹事でしたが、金沢の都心軸を金沢駅、兼六園口、武蔵ヶ辻、香林坊、広坂、本多町と捉えて、その都心軸に密接に関わる駅前の旧金沢都ホテル跡地、それから2023年に駅西地区へ移転が予定される日銀金沢支店跡地、それから本多町の核であります金沢歌劇座などについて、それぞれのあり方に関して議論し、まちのにぎわい創出に導いていきたいという考えを冒頭に示しました。いずれも金沢の顔に関わる問題であり、都市の格を上げる好機ともいえる今日的課題を議論していきたいという考えです。
 パネリストでありました金沢美術工芸大学の坂本教授は、かつて、南町には金融機関や保険会社のビルがずっと並んでいましたが、今はホテルや飲食店が立ち並んでいる。時間軸でもまちは常に変化しているということで、機能が多様化し、さらに人通りが増えたと指摘されました。同時に、交通のあり方なども含め、都心軸が生活の軸であってほしいということを強調され、また、日銀跡地の他県の事例を紹介され、また、外国の事例としてフライブルグとシュトゥットガルトについてご紹介いただきました。
 続きまして、金沢星稜大学の岡教授は、観光地のライフサイクルを紹介され、放っておけばいつか観光というものは衰退するという見方をされまして、都市の集積の利益がなければ県外資本の撤退も考えられるということで、常に新たな魅力をつくり出す方策が重要だ、その核が文化であると指摘されました。また、少子高齢化人口減少が進む日本の場合、歩いて回れるまちづくりの重要性も説かれましたし、教育関連の施設をまちなかに設置していく、学生が集まる仕組みづくりも必要である、教育をまちなかにどう取り込んでいくかという視点も重要だと言っていただきました。
 その後、日本政策投資銀行北陸支店長の板橋さんから、他都市の貴重な事例をご紹介いただきまして、まちなかに複数の機能を持つ交流施設があることが、にぎわいが創出される大きなポイントになる、官民が議論していくべきだということを指摘されました。日銀金沢支店の立地に関しては、飲食店が中心の片町と、ホテルが立ち並ぶ南町、そして武蔵の間に位置しているので、双方の回遊性を高める結節点として整備すべきだと主張されました。中心市街地のにぎわい創出に向けて、今の金沢に必要なものは何か。どんな機能が求められているか。官民学関係者の多様な知識を集結し、にぎわいイコール楽しいことがあるというその実現のために、既存の概念にとらわれない、柔軟な発想が求められると指摘されました。
 その後、フェローの水野一郎先生が、都市のにぎわいとは、楽しいことがあり、非日常性があるということだ。「都心」は「みやこごころ」とも読めるということで、駅前の都ホテル跡地、それから日銀の跡地についても、何かそういうわくわくすることにつながることを考えるべきだということをおっしゃいましたし、歌劇座につきましては、オペラ座のような施設が非常に魅力的な形態だと思うと述べられました。もとより都心はまちの顔であるので、元気がないと駄目だということもおっしゃっておられました。
 次に、セッションA「指定管理者制度〜金沢方式を探る〜」では、金沢市の行政改革大綱にも盛り込まれております指定管理者の民間活力導入が、あまり進んでいない現状を踏まえまして、金沢市の文化芸術施設の運営について、民間が得意とする分野に公募による大胆な民間活力を導入することをどう推進していくか、「金沢方式」というものがないだろうかということを話していただきました。
 進行役の同友会の清水理事は、指定管理者制度による民間活用に関して、今のところ県が市より積極的である、県ではそれにより各施設のさまざまな評価指数が上がっているということも紹介をされました。また、現在の市の文化施設に利用しづらい部分があるのではないかという認識を示して、開館時間・閉館時間などを含めて、来訪者のメリットになっていないのではないかということも指摘されました。
 金沢芸術創造財団の宮本理事長は、現状報告ということで入館者の推移を説明されました後で、人材育成、業務の効率化、施設の老朽化に伴う利用者の安全性・利便性の確保など、課題があるということを挙げられました。これに対して、館長会議から変更した財団運営会議や事業調整会議、各館の役割分担、連携強化などで、今のところ対応していると説明されたと思います。
 続きまして、金沢蓄音器館の八日市屋館長には、この場で蓄音器の音楽を流していただいたとともに、さまざまな来館者のドラマチックな実例を紹介されたり、日本中から、また大変有名な方々からも蓄音器が寄贈されており、日本的な施設になりつつあるというお話をお聴きしました。
 その後、地域創生プラットフォーム代表の総務省自治大学客員教授植村先生から、サントリーの関連機関が公共施設の管理運営を任されている事例を含め、全国の事例を紹介されました。また、指定管理制度を導入している自治体で、外部評価がなされていないケースも多いということも指摘され、モニタリングや収益性も含め、第三者評価の必要性も強調されました。常にユーザー目線に立ったサービスの提供、民間的な経営手法によるマネジメント力の向上も不可欠という認識を示されました。民間が運営する場合の課題の一つとして、専門知識を挙げられた一方で、民間が運営する場合、専門知識が一つの課題というか、関門になるということを挙げられた一方で、民間運営は地域の実情を理解し、優れた経営ノウハウがあると利点を説明されました。
 それを受けて、清水理事は、情報発信やプロモーションなど、民間が得意とするアイデアを活かすべきと述べ、最後にフェローの大内先生が、各館の競争意識を働かせ、文化を創造する担い手を誰がするのかという観点から、自治体が全部文化施設をやるべきではないということを論じていただきました。
 セッションB「持続可能な観光〜観光マネジメントの必要性〜」では、金沢の観光入り込み数の現状と、局所的な過剰の実態を把握し、観光と市民生活のバランスをコントロールする観光マネジメントの導入を検討するために議論を進めていただきました。
 まず、進行役の米沢実行副委員長は、京都市の門川市長が「京都は観光のための都市ではなく、市民の暮らしを大事にしなければならない。新たなホテル建設などをお断りする」と発言されたことを引き合いに出された上で、金沢の現状など問題提起をされました。
 簡易宿所の問題、いわゆるゲストハウスが非常に急増し、さまざまな地域住民との問題を起こしていること。それから、特に南町の国道157号線沿いに車寄せがないホテルが並びましたので、朝の通勤時など、バスレーン時間帯の朝夕に、観光バスやタクシー、自家用車などがホテルの前に路上駐車をすることによる交通大渋滞の問題。それから、近江町市場の観光客増加に伴う食べ歩きなど、都心に住む地元客が怖くて行けないという悲痛な声が聞こえてくるということも指摘をされ、長町武家屋敷や東茶屋街の混雑、地価高騰なども示していただきました。
 その後、金沢観光協会の八田副理事長から、現状報告として、金沢はあくまでも観光都市ではなく、文化都市、創造都市であるとし、金沢の強みである個性を磨くために日々取り組んでいるという基本的な考え方を強調されました。その後、金沢の外国人延べ宿泊数が、平成30年に過去最高の52万人に上ったこと、そして市内の周遊観光地の入り込み状況、時間別推移などを説明され、また季節、地域、時間帯、場所のそれぞれの分散化を図ろうとする京都市の事例も紹介されて、市民一人一人が愛着と誇りを持って暮らすまちが観光客にとっても魅力的なまちであるというふうに述べられました。
 続きまして近江町の現状報告として、近江町の商店街振興組合のビジョン委員長、紙谷一成氏が、北陸新幹線開業後、ごった返す人出に対して、商売する身として観光公害などという言葉を使うのはおこがましいとした上で、飲食店、もしくは飲食をうまく店に取り入れたところは繁盛しているが、そうでないところは生鮮部門でも苦戦を強いられている場合があるということを報告され、市民の台所としての機能が次第に失われていくという不安をのぞかせておられました。
 その後、国土交通省観光庁外客受入担当参事官付課長補佐の小林氏は、国がインバウンド増加を目指す中で、成長痛が発生した都市もあるとして、京都では、嵐山など各地の入り込み状況がリアルタイムで分かる取り組みをしている。これはアプリなどのお話ですが、そういうことを紹介されました。マナー違反に対しては、駄目なものは駄目だと言うことも重要で、地域における観光との付き合い方を考えていく上で、観光マネジメントという考え方が非常に大事になってくるという認識を示されました。
 続いて、ハワイ州観光局日本支局長のミツエ・ヴァーレイ氏からは、HTA(ハワイ・ツーリズム・オーソリティ)という機関で、ホテル税を財源に、誘客活動の一環でハワイの文化や自然などの魅力を訴え、来てもらう前に理解を促し、責任のある旅行者になるための啓蒙活動に力を入れていることをご説明いただきました。また、次世代に対しての教育を重視し、プライドと文化と環境を重視する、それを継承する重要性を説かれました。観光は、経済と生活が一体になってこそ意味を成すという考え方を教えていただいた感じでございます。
 文化政策者の太下さんは、一部の観光地への集中で交通渋滞や地元住民とのトラブルが発生するオーバーツーリズムを正面から捉えざるを得ないとし、インバウンドを地方で分散させて受け入れる動きがあることも紹介されました。
 最後に、フェローの佐々木先生からバルセロナのお話をしていただき、生活の質を落としてまで観光客を受け入れる必要がないという考え方で、しっかりとした運営をしている。金沢はどういうポジションがいいのか。金沢は文化を楽しむまちだということを指摘されました。また、サンフランシスコのホテル税の財源は、8割近くまでが文化振興に回っていることも指摘され、金沢では宿泊税の財源を質の高い文化にどこまで充てるかが大事な要素となると述べられました。
 以上が、昨日の三つの分科会の大ざっぱなまとめでございます。今日は、それぞれの三つのテーマについて全員が発言できるという全体会議ですので、よろしくお願いいたします。今から議論に入り、11時50分に提言を発表したいと思っております。まず、山野市長からご発言をお願いいたします。


(山野) ろしくお願いいたします。実は今、議会の真っ最中で、来週から議会の質問戦が始まります。セッション@AB全てが議会で今、発言通告の中に入っているものでもあり、少し言葉を選びながらお話しさせていただくことをご理解いただきたいと思います。
 まず、セッション@「にぎわい創出を考える」というテーマですけれども、都ホテルについては、先般も鶴山さんから幾つかご指摘を頂きました。私が直接、近鉄不動産の専務とお会いさせていただき、思いはお伝えしました。それ以降、担当部署が近鉄の担当者と電話で何度もやり取りをさせていただいているところです。ただ、やはり強い思いを近鉄ホールディングスのトップに伝えることが必要ではないかというご提案を頂き、私もそのタイミングだと思っています。ただ、裸で行ってもよくありませんので、いま一度しっかりと事務ベースで電話はもちろんのこと、直接お会いして話を詰めていきながら、金沢市の思い、やはり都心軸、まちの顔であるということ、それに資する施設をつくってほしいという思いもお伝えさせていただきたいと思っています。
 日銀につきましては、もう方向性は示されました。ここも、間違いなく金沢市、石川県にとって大切な拠点となるところです。坂本先生のお話の中で、建物そのものも存在感があるのではないかというご提案もありました。まさに学、アカデミックな視点からであったり、また経済界、地元の皆さん方のご意向も大切になってくる。この場も大切な場ではありますけれども、いろいろな方面からの話を進めていくには、やはり行司役のような立場の人間、ポジションが必要ではないかと思っています。やはり行政が、金沢市が担っていくべきものだと理解しているところです。日銀から方向性はお示していただいていますが、まだ具体的なスケジュール等々までは、オフィシャルな形では入ってきていませんが、市役所の中でもいろいろ議論を進めさせているところでもありまして、懇話会か、意見交換会という名称になるのかはともかくとして、時期を見て、皆さんに相談させていただきながら、考えていくことが必要ではないかと思っています。
 歌劇座につきましても、水野先生に座長になっていただきまして、今、あり方検討会でお話をまとめていただいているところであります。オペラ座のような、オペラができるようなものも必要ではないかというご提言も頂いているところでもあります。エリアとしても大切なところですし、拠点として歌劇座のこれからというものも大切になってくる、文化都市・金沢の、まさに発信の拠点にもなってくると思っています。
 あり方検討会で、今年度中に一定のご意見をまとめていただき、来年度には頂いたご意見、議論を踏まえて、方向性を示していくことができればと思っています。
 指定管理についても、幾つかご提案がありました。われわれの発信が下手だということもあるのかもしれませんが、決して手をこまねいているわけではありません。金沢プールも民間に指定管理をお願いしましたし、隣にあります屋内交流広場も民間の力をお借りしながら発信しているところです。平成29年度から、先行自治体の事例も参考にしながら、利用料金制度というものをまずは金沢プールから、平成30年度からは、スポーツ施設や文化施設においても利用料金制度を始めさせていただきました。今年の2月に第7期の行政改革大綱をまとめて発表いたしましたけれども、その中でも改めて民間の活力を活かしていきながら、指定管理のあり方について考えていきたいという方向性を示させていただいています。
 スポーツ施設は、今ほど申し上げましたように、駅西本町にあるむつみ体育館も民間の力をお借りしているところです。スポーツ施設につきましてはそんな形で動いているところですが、文化施設につきましても、庁内でも議論をさせていただいているところで、その方向性をより明確な形で示していきたいと思っています。
 セッションBですけれども、議会の皆さんだけでなく、庁内においといたしまして、市民生活にマイナスの影響が出つつある今の段階でしっかり手を打つべきではないかというご提言を頂いているところであり、われわれもそんな思いで宿泊税を導入させていただきました。文化の面でもそうですけれども、市民生活へのマイナスの影響が出ないような形、特にゲストハウスについて、地域の皆さんと一緒にいろいろな活動をすることにおいて、宿泊税も活用することも入れさせていただいているところです。また、芸妓さんをはじめとしたいろいろな金沢の文化を大切に守り、発信していくためにも、宿泊税というものは大切にしていきたいと思っています。
 特に今、いわゆるゲストハウスであったり民泊、金沢は一定の規制を掛けておりますから民泊はそんなに多くはありませんけれども、ご懸念の声は町会連合会からも経済界からも頂いていますし、金沢市も今年度、庁内でプロジェクトチームを立ち上げて議論もしておりまして、3月、次の新年度議会には条例の改正という形で提案をさせていただきたいと思っています。今議会でも議論をさせていただくことになるかと思いますけれども、今日の議論も踏まえて慎重にしっかり、その思いがはっきりと出るような形で、まとめていきたいと思っています。まず、私の方から、セッション@ABについて、大まかな方向性を述べさせていただきました。

(福光) ありがとうございます。大変具体的に市長さんから対応を示していただきましたので、これでやめてもいいのですが、せっかく来ていただきましたので、さらにアイデアを足し算・掛け算していきたいと思います。それでは、順番に都心軸の方からいきたいと思います。昨日の議論を受けて、まず鶴山さんからご発言をお願いします。

(鶴山) われわれもパネリストの皆さんも同じような思いなのですが、都心軸ももちろん大事なのですけれども、議論の対象としました3カ所は、それぞれやはり性格や立地する背景が若干違う。ひとくくりにいろいろな議論をするのもいかがなものかという認識がまずあります。それから、当事者といいますか、相手のあることなので、あまり得手勝手にものを言ってもいかんかなということはありますが、今おっしゃったように、それでも何を地元として望んでいるのか、どんなことを思っているのかということを伝えないと駄目だということが大前提ですので、特に近鉄さんに対して、市長の方からも、今おっしゃったような形でこれから行動されるわけですけれども、ぜひともよろしくお願いします。
 それと、いわゆる世界ブランドのホテルという議論もよく出ています。今、金沢では相当ホテルが建っているわけですけれども、近鉄さんが都ホテルチェーンを改装してハイグレードなものに取り組んでいらっしゃるという話が出ていました。それは別にしても、ある面で駅前の顔になるような施設をと、ぜひとも近鉄側に働きかけていただきたいという話がございました。
 後ほど坂本先生や岡先生、あるいは板橋さんからお話があると思いますけれども、金沢はいろいろな面で文化都市だということは間違いない。特にオペラ座を考えた場合に、高さ制限のある地域なので、18mの高さ制限の中でどんな施設ができるかを検討しながら、ある意味、地下に向かってものが進んでいくという方向を考えて、オペラということも意識した、重厚な文化の拠点としてふさわしい建物にしてほしいという議論が結構出ていましたので、その点もぜひともご検討いただきたいと思っています。私の話に、皆さんの方から補足してお話をしていただければいかがかと思いますが。

(福光) では、昨日のパネリストの皆さん、どうぞ一言ずつ。坂本先生からいきましょうか。三つの場所がポイントになっていますが、ご意見も含めて。

(坂本) 実際にもう動いている部分もあったり、時間差があったりしますので、部会長の鶴山さんがおっしゃったように、それぞれの場所の特性、同じ都心軸でも、都心軸としては一体の顔を持っているけれども、それぞれのエリアというものもあると思いますので、一つ一つ個性が違うと思います。
 まず、都ホテルの跡地に関しては、今、民間が所有してそれを活用していこうという状況ですので、今ほどおっしゃられたような形で進んでいくのがいいのかなと思います。高級ホテルということで言うと、本当にジャストアイデアになりますが、例えば駅西には西洋の高級ホテルが一つ建ちますので、東には伝統的な金沢の文化に根ざしたような和のテイストのものがあってもいいのかなと個人的には思ったりもします。それから、都心の中でオープンスペースというものを組み入れたような形の開発があってもいいのかなとも思います。今はフェンスで囲まれていますけれども、少し言い方は乱暴かもしれませんが、ああいった緑地的な感覚も、なかなかいいなと思ったりもします。ただ、経済的なポテンシャルから言えば、そういう使い方は難しいということは認識しております。
 日銀に関しましては、ここの性格としては、やはり今は官が所有している土地でもあり、そういった意味では官民の連携といいますか。あの地域の一つのポテンシャルとしては文化ゾーンとコマーシャルゾーン、商業ゾーンのちょうど混じり合ったような場所に展開するというふうに私は思っていまして、商業と文化施設のコンプレックスでありますとか、あと、最初に私が申し上げた保存、ただ単純に建物を保存するだけではなくて、敷地全体を活用して保存と開発という両方の考え方で、ハイブリッドな開発というか、いろいろな形で、官民であったり、商業と文化、そして開発と保存といったようなハイブリッドなこれからの展開が必要になるのかなと思います。
 日銀は、建築の方から言いますと、ぜひ残してほしい建物です。辰野金吾が第一世代、金沢に日銀を作りましたけれども、第二世代、山下設計が作られたものがあります。あれ自体、何の変哲もないような建物に見えますけれども、昭和のモダニズム、新古典様式という一つの分類に入る建物だと思います。そういった意味では、今後残していく価値は十分にあると思っています。
 それから、最後の歌劇座に関しては、今もう議論も始まっていますし、その形で進んでいくといいのかなと思っています。以上です。

(岡) 昨日申し上げたことが、早くもいろいろな方々と話している中で、改めるべきところは改め、付け足すところは付け足しというように、さらにさらに深い話になっていくところが大変楽しいところだと感じています。
 私は基本的に、やはり社会というのは、まちづくりもそうなのですが、まずは自由とか権利といったものが尊重されているべきなのだろうとは思うのです。しかしながら、土地利用に関しては、自分の土地に所有権があるから好きなものを建てていいということを認めていいのか。公共・公益とは何ぞや、まちとは何ぞや。もっと言えば、都市らしさ、金沢らしさというものが何かというところから、自由に一定の規制を掛けていく必要があるわけです。そう考えた場合に、駅前というまちの真ん中に建つものについて、安易な商業施設や駐車場といったものですと、過当競争を招き、結局、既存の企業などに迷惑が掛かってしまう、全体としての調和が取れないということになってしまうので、特定企業の自由でいいというわけにはいかないだろうという趣旨のことを、昨日も申し上げました。
 私は、姉妹都市のゲント市を例に挙げまして、金沢と比較したときに、ゲント市にあって金沢にもあったらいいかなというものを幾つか申し上げました。それが歌劇場、オペラハウスといったものだったのですけれども、その一つとして大学という存在についても言及させていただきました。ハワイの事例など、昨日も観光マネジメントでも出ていましたけれども、やはりプログラムということで、学んでもらう、良さを知ってもらうということは積極的にしないと、自然発生的に皆が理解していくというものでは恐らくないだろう。全てにおいて、この会議もそうですし、金沢において一貫しているのは、文化の重要性です。その文化の重要性を観光客にもどう伝えていくのかということについて、観光のマネジメント、セッションBの方でも、やはり難しさ、どうマナーを守ってもらうのかということも含めて、いかにものを分かってもらうかということの難しさが議論されたわけです。
 これは恐らくセッション@の方もそうでして、施設というものの重要性、あるいは、まちというものの美しさ、金沢の素晴らしさというものをどう知ってもらうかということについては、やはり積極的なプログラムその他の仕掛けが必要であろうと。そういった意味で、観光客に対してもそうなのですが、まずは住民、われわれ住んでいる人間、特に将来世代を担う子どもや若者たちにこの金沢の良さを知ってもらうということについて、自然発生的に、自由にそれを任せておいて期待できるとは、私は考えておりません。実際に学生を教えていて、いかにこの金沢について知らないかということを日々痛感しておりますので。
 観光客だけではなく、まずわれわれ住んでいる人間、特に将来を担う若者、子どもたちに知ってもらう、それを、単独の施設なのか、あるいは既存施設の有効活用なのか、そこは分かりませんけれども、その使われ方というものも考えた上での施設跡地の利用について議論していく必要があろうかと考えております。以上です。

(板橋) 一度何か施設を作ると、それはやはり10年、20年というタームで残っていくものになりますので、将来像をよく見据えて、金沢のまちをどういうふうにしていきたいのか、どういうことが金沢のまちに起こるのかということも踏まえながらというのが、一つの観点なのかなと思っています。
 幾つか事例を紹介させていただいたのは、他の地域で成功しているから、同じようなものを持ってきたらいいのではないかというような趣旨ではなくて、その成功している裏側にいろいろな各地域の工夫、仕掛けがあって、議論を詰めていくプロセスとか、あとはイベント広場が本当にワークして、にぎわいが創出されるのは、建物が素晴らしいということもあるのかもしれませんけれども、それを運営するソフトのところで非常に努力しているということをご紹介したかったからです。皆さまが言われているように、3カ所はいろいろで、関係者の方も違うと思うのですけれども、ぜひ建設的な議論をしていただきたい、そのときの視点として材料を提供させていただきました。
 私の方から、ここにはこれを作るべきである、あれを作るべきであると言える立場でもありませんし、能力もないのですけれども、ぜひいろいろな材料、引き出しを持って、いろいろなやり方で建設的な話し合いをしていっていただければと思っています。以上です。

(福光) フェローのどなたか発言を頂きたいのですが、大内さんからお願いします。

(大内) 今、和のテイストという話が坂本先生から出たので、それに関連したことを少しお話しします。何人かのタクシーの運転手さんと話をしていて、「このところホテルがいっぱいできるのだけれども、みんなカタカナの名前で、私たち覚えられないのですよね」という話をされていて、ああ確かにそうだと思いました。私も覚えられない。もちろん、それぞれ個々の民間資本の名前ですから、名前を変えろというのは簡単ではないのですけれども、ただ、通称の名前として、和のテイストの名前を付けていただくということくらいなら頼めるかなと。
 例えば、旧町名の復活を金沢は広範囲にやっていらっしゃるわけですから、例えば旧町名との関連であるとか、もちろん加賀の400年の歴史の中から、和といってもどんな和でもいいというわけではありませんので、明らかにこの加賀の歴史の中から、何か縁のあるような通称の名前をホテルに付けていただいて、実質的にそれが本体になっていった方がいいと思うのです。日本は明治以降の文明開化の中で、カタカナの名前をいろいろなところに入れてきたということ自身、私は否定するつもりはありませんけれども、「さすが金沢へ行くと何となく加賀を思い起こすような名前がホテルにも付くんだ」とならないか。
 私は世界中、いろいろなところのホテルに泊まっていますが、それぞれの言葉でホテルの名前が付いていて、別にそれで観光客が困るということはないのですから、通称名を付けられるのであれば、市の方でも協力されて、あるいは文化関係の方たちにも協力していただいて、こんな名前はどうでしょうという、そこまでの指導をちゃんとした上で通称名を付けていただくと、タクシーの運転手さんも多分すごく助かるし、それだけではなくて、ああ、金沢ってそういうまちなんだというのが、観光客もそこで意識できると思うのです。
 それは、そんなに大変なことではないと思うのです。それぞれ市の方からお願いする立場の方は少し大変かもしれませんけれども、通称名で和の名前をそれぞれのカタカナの名前のホテルとかにできれば少しお願いできませんかということをやると、少しそれだけで雰囲気が変わるかということを、今思っております。

(福光) 実際にやるとなると、商標とか商号とか、大変なのですけれども。

(大内) 結構大変なのです。それは承知しています。

(福光) では、佐々木先生。

(佐々木) ちょっとランダムになりますけれども、先ほどから話題に出てきた中で、一つは近鉄です。関西において近鉄グループはどういうポジションを占めてきたかということですが、先々代はかなりの文化人でして、お茶をたしなまれて、私はたまたまその方が所有されていた秀吉が使ったお茶碗でお茶を頂いたことがあるのですけれども、そういう方でしたので、例えば近鉄百貨店の隣に近鉄劇場というのがありまして、しっかりとしたサポートをされていました。これは過去形かもしれませんが、そのあたり、今の近鉄グループの中で、いわゆるメセナというか文化戦略といったものについて、あるいは金沢という都市の文化について、どのように考えておられるかということをまず最初にお聞きになるということは、意味があるかもしれません。
 それから、歌劇座の話が出たのでこれもランダムに申しますと、バルセロナのオペラハウスでリセウ劇場というのがあるのです。一時閉まっていまして、改装されたときにたまたま友人に誘われて行ったのですが、この友人が、実はサグラダファミリアを改修していた方の息子さんで、結構有名人なのですけれども、やはりヨーロッパも高さ規制を入れていますから、劇場の地下にいい空間をつくったのです。そして、そこの空間には、例えば幕間に楽しめるスペースがある。冒頭に言いましたように、バルセロナは観光客が多過ぎて、特にランブラス通りは過剰になってきていて、ランブラス通り周辺については新規のホテル出店は都市計画上でアウトにしたのです。劇場がはねた後、ホテルまで安全に帰れるような、そういう総合的なまちづくりが進められています。市民が非常に強いパワーを持っているので、行政もその力をむしろ使いながらオーバーツーリズムに対抗しようとしているというやり方は、見習うことができるかと思います。

(福光) セッション@につきまして、ご意見のある方はおられませんか。どうぞ、ヴァーレイさん。

(ヴァーレイ) 少しワイキキの、ハワイの話になるのですが、事例がありまして、それがもしご参考になればということでお話しさせていただきます。ハワイの場合は、やはり60年代、70年代に建設ラッシュがありまして、ホテルが日本の企業の投資でどんどん建ちました。そして、それが90年代にすごく老朽化しました。ハワイの場合、ゾーニング化といいまして、リゾートエリア、農業エリア、商業エリア、そして住むエリアと、ものすごくクリアに分かれていて、例えば農業地域で開発をするとなると、ものすごい許可が必要になるのです。そういった一定のラインというものが、すごくクリアにあるということが一つあります。
 もう一つはコミュニティの方の参画、一緒にということをすごく大切にしています。一時期、ワイキキには住んでいる人は行ったことがない。住んでいる人は、ワイキキは旅行者が行くところだという感じで、ものすごく分かれていました。それにプラス老朽化が進みまして、そのときのハリス市長が、これはワイキキを変えなければいけないということで、ワイキキのカラカウア通りで、ものすごいプロジェクトを立ち上げました。老朽化が進みますと、犯罪やホームレスなど、問題も出てきます。ホテル連合やリテールも含めて、全ての人たちが協議しまして、まずワイキキに地元の人に来てもらう施策をやっていこう。それと同時に、ワイキキの美化をしていこうということになって、ホノルル市がカラカウアの大工事に入ります。観光で一番大切な地域で工事を始めるのはすごく勇気が要ることで、地元でも反対の声もあったのですけれども、強行して電灯から歩道から全て工事が入りました。
 そして、そのときに、ワイキキにフラマウンドというマウンドを作りまして、地元のフラのグループの方々にワイキキに来て踊ってもらって、文化を共有してもらう。それからワイキキのビーチに野外上映施設を作りまして、月に2回、地元の人も観光客も一緒に楽しめるイベントをたくさん作っていきました。あともう一つ、ワイキキは駐車料金が大変高いのですが、駐車場も5時以降はフラットレートにして、地元の人でもワイキキに飲みに来られるようにする。そういった施策を次から次へと打ち出していくわけです。ワイキキでもっと地元の人たちと観光客とが絡めるプロジェクトを推進していこうということで、それがすごく成功しまして、ワイキキにたくさんの地元の方が山越えをして、後ろの山から車で来るようになって、「今日はワイキキに飲みに行くぞ」というのが、今は割と主流になってきています。
 そうすると、今度は安全の面でも、ホノルル市の方でカメラの設置をしていくのですけれども、それも地元のハワイ州観光局含め、全ての官民の協議によってその財源を固め、パトロールも民間と一緒に始め、もしお客さまに何か事故があったりしたときにも、日本語、中国語、フランス語、スペイン語、英語で対応できる民間のNPOができる。そのような形で、やはりマネジメントをしていくには、いろいろな方々の参画というものが必要になってくるのかなという事例でした。

(福光)ハワイはすごいです。そういうふうに関係者がすぐ寄っていろいろなことが決まっていくという構造のようで。

(ヴァーレイ) そうですね、島が小さいので。

(福光) いえいえ、小さいといっても、金沢より大きいので。それで、必ずGNOとかNPOとか、そういう人たちが関与しているというところも、また素晴らしいと思います。ありがとうございました。他にございませんか。なければ、セッション@の砂塚座長から一言お願いします。

(砂塚) 鶴山さんがおっしゃったように、都心軸ということで、歌劇座と日銀跡、それから都ホテルを一つのまな板の上に載せて論じるというのは、なかなか難しいということが、昨日から今日にかけての議論で分かりましたが、それぞれに金沢のまちの格を左右するといいますか、そういう大事な場所であるということについては、誰も異論がないところだと思います。
 それに順番を付けて言うとなると、まず第一は都ホテルの跡地、金沢の顔に当たるような場所に、長期間にわたって囲いがされてぽかんと大きな空間が空いている。そんな状態がもう何年も続いている。ホテルが閉店してやがて3年になり、この先ずっとこの状態が続くのは具合が悪いということは、市民の誰もが共有していることだと思います。
 これを、岡先生がおっしゃったように、民有地だから所有者が何を建ててもいいということにはならないということは、当事者の近鉄さん側も思っているでしょうし、市民もそう思っているということで、ここに、先ほど鶴山さんがおっしゃいましたけれども、世界ブランドのホテルが来るといいな、金沢の格を上げるということは、一つ大事な視点だと思います。それに、先ほど坂本先生もおっしゃったような、金沢らしいテイストが加わったホテルができるといいなというのは、願望ではありますけれども、それも金沢にとっては大事な視点だろうと思います。やはり都ホテルの跡地というのは最優先のことだろう。
 もう一つ最優先は、歌劇座をどうするかということで、これもオペラハウスと言いますけれども、オペラハウスそのものを造るというよりも、オペラができるような施設。オペラができるような施設というのは、コンサートでも歌舞伎でも何でもできる器のことを言っているのでありまして、オペラができるような最高レベルの機能を持った文化施設が欲しいなと。そういうものがあることによって、これも金沢のまちの格を高めることにつながるだろうと。
 この二つがまず時間的に最優先事項で、その次に来るのが日銀跡ということだと思います。まちのあの場所というのは、確かに江戸時代は金沢城の城壁の内側に位置する場所でもありましたし、明治以降は城壁は取り払われて、香林坊の大衆文化の中心のような場所になりました。そのような場所に隣接して位置する日銀跡ということで、官民挙げて日本海側に日本銀行の支店を誘致するのだということで実現した場所でもあります。そういうことで、日銀の活かし方というのは、なかなかこんなふうにすればいいのではないかとぱっと出てこないわけですけれども、これも官民一緒になって議論をして、最高の知恵の結集が形になるといいと思っています。
 都心軸のいずれも金沢のまちの格に関わることですので、じっくり、しかも焦らないけれども焦るというような視点でやっていきたいと思います。

(福光) 少しポイント的なことを付け加えておきますと、都ホテル跡地の近鉄さんの土地のこと、近代的都市景観創出区域ですから、高さ制限60mなので、これは非常に重要なことだと思います。金沢の50年間の景観行政の集大成でそうなっているわけで、それを崩すわけにはいかないということと、それから、来年の7月竣工されるセントリックが59mと、きちんとそれを守られたということが非常に大きなことであって、その高さの問題が一つあります。
 もう一つは近鉄さんのご意向を聞かずに勝手なことを言うようですが、市が中心となって、地元の銀行や経済界が集まってSPCを作って、場合によっては土地の所有権を移してしまうという手もないことはないので、そういうことも含めて、それをあえておっしゃることはないと思いますけれども、どこか胸の内にはそういうこともあるということを。実際にそういうこともできるわけですから、もっと金沢らしい開発というか、金沢らしい利用をという話に持っていくときに、どうしても話が合わないのなら、そういう手もあるということは、十分考慮すべきだと思います。
 それからもう一つ、日銀の跡地のことは、あのエリア、4700m2だけの話にするか、再開発していくかで違います。以前から市長は再開発の方をお考えですので、そのことの行司役とおっしゃっておられる気もしますけれども、それも重要なポイントだと思っています。これは発言されなくても、先ほど言っていただきましたので。ありがとうございます。
 それでは、次のセッションAの指定管理者制度に移ります。まず、清水さん、昨日のために半年ぐらい苦労されましたけれども、発言をどうぞ。

(清水) 文化都市・金沢ということになると、文化政策が中心の部分を成すと思います。その中で、官の役割と民の役割というのがきちっと、おぼろげでもいいのですけれども、みんな認識しているところだと思うのですけれども、やはり文化を深め、研究し、継承していくということは、官の役割かと思います。そして、市民にそれに触れてもらおうということで、いろいろな施設、文学関係というのは室生犀星や泉鏡花の生誕地であったり、関係があるところに施設を造られて、その施設を市民の人に触れてもらおう、いろいろ知ってもらおうというところまでは、確実に考えるべき役割だと思います。やはりそれが中心にあるから、きちっとこれまで継承し、われわれも触れることができたわけですけれども、あくまでその中心は、ずれてはいけないと思います。
 たまたま昨日も4人座っていましたけれども、両サイドの八日市屋さんと僕が民で、真ん中に座っておられた方が総務省と金沢市だった。真ん中にはやはりきちっと人がいなければいけないという気がします。
 そして、例えば施設の運営の中心になるのは、やはり学芸部門で、要は学芸員さんが、例えば文学館であれば文学に関して、研究し、深め、それを継承していくということの担い手の根幹だと思います。それ以外に、運営管理していくという部門があるかと思うのですけれども、やはり学芸部門というその中心を成す方々がいろいろなところに移ってしまうということはあり得ないので、この部門はやはり施設であっても官の役割ではないかということを、上村先生とも飲みながら話して、「ああそうなのかな」とようやく理解したわけです。
 その部分をきちっと残したときに、では学芸員さんはいつまでたっても文学館の中にいて、そのままいけるのかというと、それはご自分の専門分野に関しては深めていくことは可能かもしれませんけれども、僕らが触れるということになったら、もっと易しいというか、身近な形で触れるような企画であったり、いろいろなことが可能性としてあると思います。その可能性の部分を担うというところが、民の役割かと思います。
 昨日の懇親会のときですけれども、上村さんからは次から次へといろいろなアイデアが飛び出してきました。例えば、学芸部門を官に任せてしまって、学芸員さんがそこにこもっているということはあってはいけないわけで、だったら、仮に公募で民間に管理運営から、一番得意としている広報であったりプロモーションであったりというところを委ねたとしても、学芸員さんが出向してきてやるとなったら、他のところの考え方であったり、触れ方ということを学ぶ機会が生まれるわけです。生まれるというのは、市役所の、あるいは官の中の場ではなかなかそういうことは実現しませんけれども、実際にいろいろなことを企画しよう、プロモーションをしようというときに、必要とする人たちを呼び出すという部分が外に作られるとなると、やはりその外のところで触れ合って、新たな企画ができるのではないかという気がします。その部分に民間のネットワークを利用しない手はないわけで、それが民間の役割ではないかと思います。
 例えば昨日も、広報は金沢市よりも、もしかしたら民間の方が得意ではないかと思ったわけですけれども、八日市屋さんのお話に皆さん感動もされたし、施設に非常に面白い、新たな価値というものが、館長のおかげでどんどんできているということが分かるわけです。それを年に1回だけ現場に行って館長から聞き取って、果たして広報に載せることができるだろうかと考えるわけです。来訪者であったり市民がそこに行ったときに、例えば館長さんから、80代のご夫婦が来られて「有楽町で逢いましょう」を蓄音器で聴いたら、この音だということで感動して泣かれたというお話をお聞きしたのですけれども、その感動をすぐに伝えて、何か企画にならないかということを考えるということは、年に1回そこに行って、館長がちゃんとやっているかということを評価するような管理制度では、実現しないと思います。
 そこを訪ねて、あるいは来訪者はこう言っているということを八日市屋さんと話して、それを企画に結び付けられる可能性があるのは、触れる機会が多い僕らではないかと思いました。しかも、広報となると、館長さんがそのことをすぐに発信できるような仕組みがあって、そういう話が飛び交うということが実現するなら、館長さん同士の館長会議をしなくても済むかもしれません。そういうことは、企画、プロモーションを考えている民間であれば、すぐに実現することだと思うのです。そうなると企画の部分も厚みを持つので、広報だ、プロモーションだという民の得意技の部分は、民の役割として公募するという形にしていただいたらいかがかなと。官の役割として残る部分と、民も一緒にやりますということで公募する部分があるというのが、新しい官民連携のあり方なのかなと、話しながら感じました。

(福光) ありがとうございました。学芸員さんが正式な財団の社員ではない場合もあるので、もう少し学芸員のポジションというのは自由度があってもいいかとは思いますが、その辺も含めて、上村先生、どうぞ。

(上村) 個別の官がどうなっているかというのはよく分かりませんけれども、一つは、今、清水さんがおっしゃったような官民連携の施設づくりといいますか、学芸員などの専門的な知識を持った方とプロモーションとか民間的な経営の感覚を持った方が融合することによって、また新しい価値が生まれてくる。これが基本だと思うのです。だから、そのような仕組みをどうやって作るかということではないか。指定管理という仕組みの中でそれをどうやって実現できるかということだと思います。
 もう一つ、昨日申し上げていなかったことですけれども、金沢市の設置する文化施設の中に、同じ性格を持ったものが幾つかある。例えば、文学館系の施設とか、美術関係の施設とか、工房とか、あるいはホール、文化会館のような施設。こういった施設には、共通して要求される経営資源、人的資源があると思うのです。これらの施設をまとめて指定管理するということが一般には結構行われていまして、そうすることによって、例えば人材を施設間で融通できる、繁忙期にはどちらの方にとか、そういう柔軟な経営ができるということは一つあると思います。そういう指定管理の公募の方法もある。あるいは、公募でなく財団管理にしても、例えば事業部制のような形で、施設群ごとに責任者、マネジメントを行う人間を置いて経営責任を持たせる。あるいは、施設群ごとに独立採算にするとか、そういった経営の手法を取ることによって、もう少し施設群ごとの広報宣伝やプロモーションなどができるということを、一つ私は提案しておきたいと思います。
 それからもう一つ、これも昨日はあまり触れなかったのですが、文化施設が非常にたくさん存在する。金沢市が設置しているものもありますし、県が設置しているものもありますし、民間の文化施設も金沢にはたくさんある。こういった施設は、一応、連携は取れていて共通パスポートなども出ているようですが、もう少し一つのインフラといいますか、シティカードの話もありましたけれども、こういった施設の共通利用と、例えば交通系のインフラも一緒にセットしたようなカードを作るとか、さらに言えば、今の世の中の流れから言いますと、そういった施設利用ができるようなスマホのアプリを作る。あるいは、その場所に誘導されるように、自分が関心を持った分野についてイベントなどがあれば自動的に送られてくるとか、そういった情報インフラを共通プラットフォームとして金沢の施設が持つ。そして、それを多言語化すれば外国人にも対応できるので、非常にユーザーフレンドリーな仕組みができるのではないか。こういったこともあると思います。
 それからもう1点、先ほど歌劇座の話も出ましたけれども、ホールが若干、貸館業的になり過ぎている。舞台芸術や音楽関係の市民の文化活動を支援していくとか普及していくという面において、ホール系、舞台系をもっと強くした方がいいのではないか。例えば、新たにオペラ座を造るにしても、そういったソフトウェアの部分、活動部分がないと、箱を作っても全く意味がありませんので、そういう文化活動を支援するサポート企業を募るとか。工芸関係はもう十分進んでいると思うのですけれども、まだ十分でないとも思われるような部分、オーケストラはありますけれども、それ以外の、例えば歌劇団とか市民オペラみたいなものとか、劇団なども支援する仕組みをつくったり、あるいは国内の他の地域の劇団とか音楽活動をされている団体などと連携を図るような仕組みなども必要ではないかと思いました。

(福光) 大変具体的なアイデアを頂きました。どれもやれそうな感じがしましたけれども、宮本理事長、いかがですか。できる範囲の発言で結構です。

(宮本) 基本的な部分にもなってしまうのですが、芸術文化に関する施設の指定管理者になっている外郭団体が、文化振興財団と、私どもの芸術創造財団の二つあります。文化振興財団については市民等から寄付を受けたものも含めて、過去の文化遺産を保存継承していくための施設の管理をしている。私ども芸術創造財団については、新たな芸術文化の創造に向けて、今頑張っている人が活動するための施設を運営している。そういう区分がまずあります。この区分の形だったり、現在の私どもの芸術文化ホール、それから芸術村ですとか卯辰山工芸工房、湯涌創作の森と芸術文化施設、そして21世紀美術館などの美術館、この3点セットというか、この組み合わせが文化の多様性を尊重する金沢らしさなのではないかという思いが一つあります。
 ホールは基本的には発表の場で、今お話をした芸術文化施設についてはどちらかというと育成の場で、美術館は鑑賞の場であり交流の場であって、新たな文化の創造に向けて刺激を受ければと、そんなある程度の位置付けをしておりまして、これらの場をうまく連携させて芸術文化の振興につなげていくには、一部を切り離すというのは得策ではないのではないかという思いが一つはあります。
 ただ、昨日もお話ししましたが、財団の現状では力不足の点が、受付業務の場であったり、舞台技術の部分だったり、そういう点で民間のノウハウ、人材の活用を図っていく必要がある部分もいろいろありますので、そういうところでうまく民間活力の導入を図っていくいいやり方がないのかなと、そんなふうに考えております。

(福光) ありがとうございます。ですから、先ほど上村先生がお話しになった、財団の中でのグループ化、事業部制のような話。その一部をまとめて指定管理者制度を導入するとか、それから全体の文化施設、これ本当は前から課題になっていまして、県の文化施設と市の文化施設はパスポートだけ出ましたけれども、あまり具体的に一緒にやっていないので、今度、国立工芸館という国家の文化施設が来ることを機に、何かそういう方向に持っていくというのも一つの課題で、来年の創造都市会議はそういう話になるかもしれませんけれども、今日はアプリの話をされました。それから、ホールにソフトが必要だということをおっしゃっておられるのと、今、宮本さんからは、できるところから外部の力を入れていったらいいというお話がありました。従って、今日のお話を踏まえて、金沢独特の方式のようなものを編み出していくときが来ているのかなということを思います。林理事どうぞ。

(林) 冒頭、福光さんがおっしゃったように、市長がこの間の懇談会のときよりも一歩進んだ発言をされて、検討すると言っていらっしゃいますからそれでいいと思いますけれども、少し整理したいのは、指定管理者制度は、金沢市はもう立派に芸術文化では導入されているのですよね、金沢方式で、山出市長のときに。元々、指定管理者制度というのは、小泉改革のときのキーワードは「官から民へ」でしたよね。でも、山出さんはきっと、「民間の分からんもんにやらせたって、ろくなもんにならん」というので、ああいう立派な組織を作られたのだと、私は思います。でも、いつまでもではないですよね。元々「官から民へ」なのですから、民間が活かせるところは活かすような、新たな金沢方式を作るのがいいと思います。

(福光) 松田さん、どうぞ一言。

(松田) 先日、東京からお見えの方がいらっしゃって、夕方3時頃に少し時間が空きましたので、金沢でお見せするところないかということで、月曜日だったので、いろいろな施設がお休みだったこともあって、金沢蓄音器館にご案内しました。ちょうど4時から演奏を聴かせていただきまして、東京から来た人も「金沢で、何で蓄音器なの」という感じだったのですが、演奏を聴いてすごく感動されまして、「ああ、すごいよね」と。後ほど話をしたら、蓄音器の音に感動したというよりも、「さすが金沢ですね。蓄音器のような文化もあるのですね。やはり奥が広いですね」と言っていただきまして、少し誇らしい思いがしました。
 昨日、たまたま八日市屋館長と個別にお話しさせていただいて、本当に魅力的な方だと思いました。いろいろなお客さまとの出会いのお話もされたと思うのですけれども、こういう魅力的な方がやっていると、やはり館の魅力も高まって、人気も高まるのだと思ったのですけれども、もう一歩踏み込んで考えると、八日市屋さんのように魅力のある方がずっといらっしゃればいいのですけれども、たまたまそうではない人もいらっしゃると、もしかすると急に館の魅力がなくなるのではないか。そう思うと、制度的にユーザー目線というか、お客さまを引きつけるようなものを導入するような視点と、建物の管理などのそもそもの官の役割というところをしっかり踏まえて、文化都市・金沢の魅力をさらに高める。当然、市民の方もその施設を利用するわけですけれども、やはり公民の役割といいますか、公民の連携といいますか、昨日、上村先生からもいろいろな事例のお話があって、それがうまくできれば、閉館時間・開館時間などもフレキシブルにできて、ものすごく入場者数が増えたという事例もあるようです。
 それぞれ背景や文化、歴史が違うと思うので、一概にオールオアナッシングで語ることはできないとは思うのです。金沢方式を探るというテーマどおり、金沢に合った、金沢の文化の魅力を高める施設は多種多様でたくさんあると思うので、市長はそれにさらに磨きかけるように検討を加えると言ってくださったので、今日の議論も参考にしていただきながら、進めていただければありがたいと思います。

(福光) 市長、何かご発言されますか。よろしいですか。十分お聴きいただいたということでございます。それでは、時間の都合もありますので、セッションBに入っていきます。まず、米沢さん。

(米沢)昨日、フェローの佐々木先生に、京都と金沢は文化を楽しむところだと、しっかり定義をしていただきました。私は昨日、京都市長の発言から入りまして、京都を訪れた観光客のアンケートも出たのですけれども、人が多過ぎる、渋滞だらけ、見たいところが見られない、そして市民サービスが悪いという順番で出ていました。そしてもう一つびっくりしたのは、京都市民がいわゆる名所に全然訪れていないという話も併せてありました。せっかく文化を楽しむ場所なのに市民も行けないというのはどういうことかと思ったのですけれども、それを金沢に置き換えると、やはりまずいところがたくさんあるという話がありました。
 セッションBでも、マネジメントとかコントロール、ガバナンスという言葉がたくさん出てきました。私は今年、バルセロナを見に行ってきたのですけれども、バルセロナでは1日のそれぞれの施設の総人数を決めているのです。そして、時間帯の予約も必要で、車やバスで移動したのですが、バスの運転手が「何時何分から何分の15分間だけここに停めて降ろしていいということになっている。だから、帰りも何時何分から何分までに来てくれないとバスには乗れない」と言うのです。つまり、どこかでしっかりコントロールしている場所があるわけです。これまたすごいということで、市長の経歴をいろいろ調べたところ、まだ市長になって5年しかたっていないのに、ホテル建設をストップし、新しい組織を作って規制をどんどん始めているということで、人によってまちがすごく変わるということを、改めて実感させていただきました。
 そういう意味で、金沢も今こそ手を打つべきだろうと思うのですけれども、今までの組織で規制や新しい条例というものを考えられるかというと少し疑問で、それをするにはやはり新しい組織が必要です。今も旅行業者や観光業者など、いろいろな人が入っている観光協会がありますが、そこに市民団体とかいろいろな人に入っていただいて、そして権限を持つ人も必要なので、やはり行政の、市長をトップとする。そして、ミツエ・ヴァーレイさん、プロモーションと規制を両方一緒にやるという、すごいことをやっていらっしゃるので、ぜひともその組織には、金沢生まれの彼女を顧問か相談役かアドバイザーで入れていただければと思います。そのような組織でいろいろな話題を取り上げてもらって、規制や条例を新たに作っていくようにすれば、金沢はうまく持続的な観光のまちになるのではないかと思いました。
 もう一つ、昨日、小林さんが、インバウンド6000万人とおっしゃって、それを受けて太下先生が、関空、成田、羽田、福岡、今の空港でそれをどうするのだ。そうなると、ひょっとしたら小松空港にも5、6倍から10倍ぐらいの外国人を受け入れるような、地方空港が全部そうならないと受け入れられないという話をされました。改めて計算すると確かにそうなるわけで、何とかの法則で収束するという話もありましたけれども、これから先、日本はもっと大変なことになるのだったら、もっと早めにいろいろなことを準備しなければいけないかなと思いました。そういう意味では、早くそういう組織を立ち上げて、うまく観光ガバナンスするような形になればいいなと思いました。

(太下) 昨日は、オーバーツーリズムとかサステナブルツーリズムというテーマでお話をしていたわけですけれども、昨日も少しご紹介しましたが、恐らく日本でそういうことを一番最初に提唱されたのが、民族学者で文明学者でもあられた梅棹忠夫先生で、何と、1970年ですからもう半世紀前に、京都を題材にですけれども、講演でそういうことをおっしゃっているのです。改めて読むとすごく含蓄が深い言葉がいっぱい書いてあって、観光公害と言ってしまうと少しきつい言葉になるのですけれども、これからの観光産業というのは創造的な産業であるべきだということまで提唱しています。まさにそういったことで言うと、この創造都市・金沢にぴったりのことをここで提唱されているわけなのですが、講演の一番最後におっしゃっていることを、ちょっとそのまま読み上げます。京都のことをおっしゃっているのですが、これは多分、金沢にぴったり当てはまると思います。「京都にそういう創造的な観光を考える機関がないとは一体どういうことなのでしょう。普通の国際感覚から申しますと、京都には当然、観光産業研究所など具体的な作戦を考える機関があってもよい」と。創造的な観光のための機関というものがぜひ必要だということを提唱しているのです。先ほど米沢さんがおっしゃったような機関を、半世紀前に予言しているような講演をされている。
 実はこの文化と観光ということを、今、政府の方でも大きな政策として取り上げられていまして、今日は観光庁の小林さんも来ていらっしゃいますけれども、文化庁と観光庁、この二つの庁が、少し長い名前ですけもれども「文化施設を中心とした文化観光のあり方に関する検討会議」という新しい委員会を両庁共管で立ち上げています。実は私もメンバーなのですが、この会議第1回目がつい先日行われまして、そこで実は事例として金沢が紹介されていました。恐らくこの会議をこういう形で打っているということは、来年度早々からこういったことに関して国としても重点的に政策を展開していくことを念頭に置いているのだと思いますけれども、そのモデルケースにこの金沢があるということです。ですから、金沢としては非常にいい状況を迎えているということです。
 あと、私自身は国立美術館の理事という立場でもあるのですけれども、ご案内のとおり、来年、国立工芸館が新たにできます。できる場所がまた非常に重要で、ご案内とおり、既に21世紀美術館をはじめ、さまざまな美術館、さらに言うと先ほど出た歌劇場とか、日銀跡地も十分徒歩圏内に入る。非常に多くの文化施設が集積するエリアだということが、より目立つ形になるわけです。これは世界的に見ても実は貴重だと私は思っていまして、一定の徒歩圏内の限定されたエリアにこれだけ文化施設が集中している地区は、実はありそうでそんなにないのです。大都市だと拡散してしまいますから。
 例えば、東京で言うと上野がこれに相当するわけですし、外国で言うと例えばベルリンの博物館塔でありますとか、ウィーンにミュージアムクォーターという地区があります。あと、アメリカのスミソニアン。それから、先ほど佐々木先生が紹介されたバルセロナの中心のラバル地区、ラバル地区にすぐ隣接でリセウ大劇場もあるという形なのですけれども、多分、今挙げた地区でほぼ全てです。文化施設が徒歩圏内にこれだけ集中している地区はそんなにないので、逆に言うと、本当に世界的な文化都市になり得る。そして、それが結果として観光にも大きく寄与し得るポテンシャルを、今、金沢は有しているのだろうと考えるわけです。ぜひ今こそ、何か手を打つべきタイミングが来ているのではないかと思います。以上です。

(小林) 昨日、太下さんの方から、今後は非常に多くの外国人を地方空港で受け入れる必要があるという趣旨の話を頂きまして、私は総論としてはそうなのだと思うのですけれども、昨日、政府の方で26兆円規模の経済対策を閣議決定したと、今朝の北國新聞にも出ていました。これについては恐らく補正予算で対応することになると思いますが、その中に、成田空港の3本目の滑走路についての財政投融資というものも含まれているわけです。その他にも、例えば那覇空港の2本目の滑走路は現在事業中であるとか、福岡空港の2本目は来春には供用されるということで、いわゆる今の日本の85%の出入国を賄っている七つの大きな空港の機能強化は引き続き行われていくので、地方空港についてももちろん伸びていくとは思うのですけれども、どれくらいの程度になるかは若干議論が残るかなと、聴いて感じた次第です。
 私の昨日の発言について少し補足をさせていただきますと、成長痛という言葉を使って現象を表現したわけなのですが、私がお伝えしたかったのは、昨今の急激なというか、観光政策を政府が非常に強力に進めている、もしくは民間の方でもそれに呼応した動きが出てきている中で、社会全体に変化が表れているというのは、おっしゃるとおりだと思います。その中で、地域でも課題が現れつつあるということを、私は表現したかったと思っていまして、あえてその中で成長痛という言葉を使ったのは、思春期になると非常に体が急速に大きくなっていくわけで、私も経験しましたけれども、膝が痛くなったりとか、部活を少し抑制しなければいけなくなったりとか、そういうことはあるわけなのですが、体の成長自体止まらないわけです。逆に言うと、体が成長し切ってしまえば、よりたくましい強い頑丈な体になるわけで、そのときには痛みはなくなっているわけなのですが、観光というものも、今非常に伸びている。その中で良い面ももちろんありますし、課題も認識されつつあるということなので、今後、われわれが観光というものをよく捉えていくときに、どういうふうにしていきたいかということを、まさに先ほどお話がありましたように、観光関係の方、あとは行政、自治体といったさまざまなステークホルダーの方が話し合う、合意形成をしていく場が恐らく必要であろうと思いまして、マネジメントの必要性があるとお伝えたかったつもりです。
 人口減少が急速に進んでいる中で、ここ金沢は非常に大きなまちですし、数百年にも上る歴史を持つような老舗の企業もあるわけです。昨日、ミツエさんの動画を拝見したときに、われわれみんなハワイに行きたいなと思ったわけなのですけれども、それはひとえにハワイがすてきな観光地だからというよりも、ハワイが持っている独特の文化、彼らが大事にしているもの、そういったものにわれわれが共感したからだと思います。そういった中で、先ほどから文化都市であるというようなお話もたくさんありましたけれども、まさに文化都市としての金沢を外国の方に理解していただきたいという思いは、共通してあるのかなと思いますので、そういった観点で、まさにどういうふうに観光というものに取り組んでいけばいいのか、今後、金沢市の地域で議論が進んでいくことを、われわれとしては期待したいなと思っています。
 例えば、ホテルの駐車場の問題というのは、ある意味ではまちづくりの手法によって解決が可能な気もします。マナーに関しては、なかなか打つ手は難しいのですが、地道な普及啓発などにも取り組んでいくことが必要だと思いますし、国としてもマナー啓発の動画などを、共通で地域の方々に要望に応じてお使いいただけるように制作したりしています。観光というのは、例えば外国人観光客は日本の宿泊を伴う観光客の3倍の消費単価があるということにも表れているのですが、非常に大きな可能性を秘めているわけなので、押さえ付けるという意味での管理ではなくて、悪い点があるのであればそれを軽減して、良いところをどんどん取り込んでいけるようなものとして、地域が付き合っていけるようになっていくことを、観光庁としても非常に願っておりますし、そのために国としても一生懸命取り組んでいきたいと思います。

(福光) それでは、ミツエさんから。もう一度、HTAの役割の中で、マネジメントやコントロール、それからゾーニングの上でのプロモーション、それからしつけ、啓蒙、その辺のことについて、金沢だったらどうすればいいかというようなお話を聞かせていただけるとありがたいです。

(ヴァーレイ) まず、金沢もそうだと思うのですけれども、ハワイも同じく成熟した観光地で、成熟すればするほど、そこには進化していかないといけない次のステージがあるわけです。ハワイもそうなのですが、最初は人数、宿泊日数、滞在日数という数値ばかり追い掛けていました。ですが今は、消費額はもちろんなのですけれども、ターゲットとするお客さまの質、どういったお客さまに来てほしいのかという議論が、ものすごくなされます。それともう一つは、文化の維持伝承。もうそこにしかないものをどうやって伝えていくかということと、自然環境の保持・持続、これもものすごく大切だということについて、州民、それから官も民も含めて、理解度を統一していくという協議が、ものすごくなされます。
 その中で、私どもがずっと協議しているのが、観光経済とそのバランスです。どのマーケットから何人、どんなお客さんに来てもらうのが、ハワイにとって一番ベストなのか。今は600万人で、これが800万人いったらどうしようと言っていたのに、今既に996万人で、そこでどういうふうに観光をマネジメントしていくか。ですから、この観光マネジメントということは大変大切だと思っています。
 その観光マネジメントの中には、まず戦略を作るということ。観光戦略は、長期があって短期がある。その長期をしっかり作るには、財源をしっかり確保して、プランを立てる。そして、官の役目はその指針をリードしていくことなのですけれども、今度それをイニシアティブとしてプランを立てていくときに、民のいろいろなプロが入ってくるわけです。そこら辺の線引きがすごくクリアなのと、その報告やレポートや分析を必ず官民一体でやっています。官であるハワイ州観光局は、州知事オフィスの直下に設置されているのですけれども、それでもボードメンバーがいて、ボードメンバーに経済界のリーダー、ホテルのGMのみならず法律家の方、会計士、それからビジネスのリーダー、いろいろな方が入って協議をする。そういうところがすごくハワイのいいところだなと、ハワイに住んで金沢と比較しながら思うのです。
 その中でもう一つ大切なのが労働雇用で、ハワイの場合、若者がみんな本土に出ていってしまいまして、この労働雇用が今すごく問題になっています。そこですごく必要なのが教育の面です。岡先生もおっしゃっていましたけれども、ハワイの場合まず小学生にはハワイに生まれたというプライドを埋め込む。アロハスピリットとは何ぞや、ホスピタリティとは何ぞやというものを埋め込んでいく野外実習が大変多いです。クラスルームだけでは学べない本当に地元に何がある、ほとんどハワイでは自然や文化に触れることにすごく注力しています。海に囲まれた島なので、共存というものの大切さ。そこから入りまして、教育委員会と地元のNPOと学校も横串で、みんな一緒になるのです。学校単位ではなく、1年生、2年生、3年生という学年単位で、他の学校の子どもたちとしっかり交われるような形になっています。中高になると、今度はホテルアソシエーションや、官であるハワイ州観光局の財源から出ている野外実習制度というのがありまして、中学生、高校生から観光業に興味を持ってもらうために、旅行会社やホテルの裏、もしくはワイキキに出ていって観光客にアンケートを取るというような野外実習が授業の一環として入り、大学に入ると奨学金制度とインターンシップがありまして、大学で観光、それからマーケティングについて、経済学部の学生たちが現地の会社でしっかりインターンシップをする。これが少しずつちゃんとプランになっているというところが労働雇用で、その後の、働いている方々のトレーニングも含め、大学、教育委員会も含めて連動しています。
 ターゲティングオーディエンス、どのマーケットからどんな人に来てもらいたいというのが、ハワイの場合はアメリカンマーケット65%、日本マーケット16%なのですが、両方のマーケットでリピーター率が70%を超えています。ファーストタイマーを誘致して次世代をしっかりと取り込みながら、でもリピーターで毎年来てくれる、経済的に社会情勢で何があっても、やはりハワイに来ようと来ていただけるお客さま。リピーターとファーストタイマーの施策も、ものすごく大切なのです。
 そのために大切なのが、マーケットリサーチになります。マーケットリサーチというのは、世界から見てハワイがどのポジショニングにあって、ハワイに今どこからどんなお客さまが来ていてということです。私は担当が日本マーケットなので、日本マーケットのリサーチをするわけですが、日本マーケットもすごく変わります。団塊世代とバブル世代、今の若年層では、全く旅の仕方も情報の取り方も違うのです。それがアメリカも違うし、ヨーロッパも違うし、オーストラリアも違うし、台湾もチャイナも違うとなったときに、ものすごいマーケットリサーチをします。
 このリサーチには二つありまして、歴代、1970年代からの一定のアンケートリサーチと、もう一つはマーケットごとのリサーチ、これを分析してしっかり戦略を一緒に作っていく。もう一つは、それをしっかりコミュニティにアウトリサーチするという意味合いで言うと、今、観光戦略はこれです、ここのマーケットはこういうお客さんで、こういう方が来ていて、なので中小企業が多いですのでそういった方々のプロダクト、売る物、サービスが合うように、地元で観光局がコマーシャルをかけたりします。あとはいろいろなセミナーもします。地元向けのボイスというのもすごく大切なので、ミッションやビジョンを決めたときの理解度と透明性、それが市民、州民まで伝わるようなコミュニティアウトリサーチという意味合いでは、ものすごくディスカッションする場が多いです。
 もう一つ最後に、ツーリズムの進化というのがありまして、私どもの場合は今レスポンシブルツーリズムをものすごく押しています。その中でもエッヂツーリズム、ボランツーリズム、エコツーリズムと、いろいろなツーリズムがあります。メディカルツーリズムもそうです。これからメディカルツーリズムもハワイも入っていくのですけれども、ツーリズムのあり方というものについて、金沢ではどこにフォーカスを置くのか。フォーカスを置いたときにどんな観光マネジメントのコミッティが必要で、どんな協議が必要になってくるか。成熟するとどんどんその協議する内容も狭まってくるということですので、やはりいろいろな事例の検討やいろいろな協議を、今後、官民教育機関でやっていかれるとよいのかなというところです。

(福光) 大変具体的なアイデアを頂きまして、ありがとうございます。レスポンスツーリズムと昨日お聞きして、何かこちらがお客さんに責任を持つのかと思ったら、来る人が地域に責任を持つという、素晴らしい考え方だと思って。従って、啓蒙という言葉よりも、ほとんど教育というか、しつけみたいなことをやっておられるので感心しました。そういうことを金沢はまだやっていなくて、何度言っても食べ歩きをされたり、いろいろと困っているわけですけれども、そんなことです。浅田さん、どうぞお願いします。

(浅田) なぜ私がここにいるのかということを手短にお伝えしますけれども、実は2015年の1月に内閣府が地方のDMOを推進する補助金を出すという発表をしたときに、私は内閣府に呼ばれていろいろ話を伺ったのですけれども、そのときに地方DMOのアドバイザーみたいな方が、ハワイのHTAが大成功している例だとおっしゃっていたのです。結局、そのDMO問題というのは、小林さんとも昨日少しお話ししたのですけれども結構難しくて、金沢だと金沢市観光協会がDMOで、石川県だと石川県観光連盟がDMOということになっているのですけれども、実際のところ元々2015年に政府が言っていたDMOというのは、権限とかという部分でなかなか今実現し切れていないと思うのです。
 私は2015年にHTAが一番世界で成功していると聞いて、ずっと気になっていたのですけれども、なかなかそこまで勉強する機会がなかったのが、今年、私が何のご縁もないのにハワイ州HTAにメールを送って、勉強させてくださいと言って、ミツエさんと知り合ったのです。そして、お話を伺ったら私一人が聞いていい話ではないと思って、八田さんに来ていただいて、ハワイで2人で勉強しました。
 これはもっともっと多くの人に聞いてほしいなと思っていたところにちょうどこの会があるというのでお声掛けしたら、来ていただけたということなのですけれども、昨日のミツエさんの発表を聴いて、皆さん、これは無理だわ、こんなこと金沢では無理だわと思ったと思うのですけれども・・・。思っていないですか。私は何かすればいいのではないかとすごく思ったのですけれども、結局、財源の問題と権限の問題とノウハウの問題がハードルだと思うのです。ミツエさんは故郷金沢のためならアドバイザリーボードをやってくださると。しかしノウハウを持ってる方がいても、権限というところで、やはりどうしても市長に絡んでいただかないと難しい。これは「いや、金沢のDMOは観光協会なのだから」という問題ではない。いろいろな規制を掛けたり、規制を掛けるというと少し言葉が悪いのですけれども。例えば、私は最近感じるのですけれども、バスにスーツケースを持って乗ってくる人がすごく多いと思うのです。バスにスーツケースを持って乗ってくる人がいて、地元のお年寄りの人が降りようと思っても降りられない、壁になってしまってという場面をよく見るのですけれども、例えばハワイのバスは膝の上に乗せられるサイズまで、それ以外のものは基本駄目ですよね。そのために、ではどうするかというと、観光客の人はシャトルバスがあったり、もしくはタクシーに乗ったりするわけですけれども、誰かがそういう調整をしなければいけないと思うのです。北鉄とJRに荷物の規制を掛けましょうという話です。では、誰がそれを言うのだといったときに、観光協会がそれを言うのかというと、ちょっとそれはかわいそうだなという気がするのです。
 ですから、例えばこのバスの話で、先月聞いたのですけれども、JR東海は来年の5月から、スーツケースを持ち込むのを有料にするらしいです。なぜJR東海だけでJR東日本と西日本をしないのかよく分からないのですけれども、急に観光客が増えた日本で起きているいろいろな歪みみたいなものを、みんながいろいろ調整しようとしているわけです。
 そういう組織というか、マネジメントをすることが必要だと思いますし、HTAの財源が80億と昨日伺ったのですけれども、金沢市の宿泊税が7億ぐらいです恐らく。ハワイの宿泊税は何%ですかとお伺いしたら10.25%で客室ホテルの単価が大体2万7000円ぐらいが平均単価。2万7000円の10%というと2700円ぐらいハワイは宿泊税を取っているわけです。金沢は今200円です。それをハワイ並みに取れば、80億出てきますよね。私は旅館組合をやっている立場上、あまり言ってはいけない気もするのですけれども、宿泊税は最初少し抵抗があったのですけど、もう私たち慣れましたから、少し価格をアップしてもいいのではないかという検討も含め、ぜひこのマネジメント組織があるといいなと思います。ありがとうございます。

(福光) ありがとうございました。宿泊税の使い道というのも課題になっていますので、まずできるところからマネジメント組織をスタートすることが、まず今日のところは大事だろうと思います。八田さん、何か発言がございましたら。

(八田) だんだん組織論になってきましたので、私どもの立場を申し上げますと、金沢市から委託を受けて、その仕事をいろいろな事業者会員と一緒にやっていく、これが一番大きな仕事です。もう一つ、400社近い会員から会費を頂いています。ですから、その会員に元気になってもらうこと、これも大きな仕事になっています。
 少し話がずれますけれども、昨日、私が言いたかったのは、どうすれば市民と観光客が触れ合うことができるか。それができて、相互の理解ができればいいのではないかということです。インバウンドも増えてきますので、今年からやっていることの紹介を少しさせていただくと、近江町を全部知っているような料理評論家、専門家がいます。その人がお客さまと近江町へ行って買い物をして、古い町家で料理を教える。みんなで作って食べる。そんなこともやっていますし、あるいは「武士のたしなみ」というネーミングでお茶の体験をする。旧家で日本刀を持っていらっしゃる方がいるので、そこで本物の日本刀を、触りませんけれども見ていただく。最後、鷹匠を呼んで鷹狩のまねをする。こんなことをやってみたりとか、あるいはボランティアでトレッキングとかをやっているグループがありますけれども、そういう人たちに卯辰山を少し散策していただいて、そのあとそこで花鳥風月を見て、友禅の染をやる。こんな形でいろいろと新しい、いわゆる業者さんではない市民を巻き込んで外国人と触れ合う、こんなことを今少しずつ広げていっているところです。そういう意味では、われわれの立場としては、事業者会員が一番大事ですけれども、やはり市民も巻き込んでいって来訪者と触れ合う。そんな仕掛けをまた今後ともやっていきたいと考えております。

(福光) 金沢観光協会の場合、DMOのMというのはマネジメントよりマーケティングで、デスティネーション・マーケティング・オーガニゼーションの方ですね。

(八田) 実は、私どもはマーケティング会議というものを設けておりまして、宿泊事業者、交通事業者、商業施設、それからお土産物、アクティビティ、月1回、毎月集まっています。

(福光) それはそれで一生懸命プロモーションもしていただいて、質も上げていくことをされて、その片方にマネジメントというかコントロールが必要になってきているという話です。さて、浜崎さん、担当のセッションAでなくても、全体に感想を一言どうぞお願いします。

(浜崎) 全体的に言えば、私は去年もこの会議に出させていただいたのですが、今回はわれわれにとっては非常に分かりやすいテーマでした。例えば指定管理についても、一方的に民間という話でもなくて、いろいろな形で歩み寄って、目的は来訪者がとにかく満足して帰る、それが最終的な目的といいますか、そんな中でどういうふうにしたらいいのか、官民が歩み寄ってやる。それにはいろいろなやり方があるというお話が上村先生からありまして、そういった点を勉強させていただきましたし、具体的にどんなことができるのか、市側と有識者と皆さんで具体的に詰めていく必要があるのかなと、そんな思いを持ったりしまして、今回はいろいろと勉強をさせていただきました。ありがとうございます。

(福光) ありがとうございます。本になりましたけれども22年間もやっていまして、大ざっぱに言うと前半の10年が山出前市長で、後半の10年が山野市長ということになっていて、こうやって一緒に議論できることをずっと続けられているというのが、このまちの特色だろうと思うのです。他の地域へ行くと、まちづくりの敵が市だったり、すごく面白い変な構造になっているところがたくさんありまして、金沢とか石川では考えられないことが結構あるので、そういう意味では大変ありがたいことです。
 市長さん一言、全体感でもいいので、議会に問題ない範囲で。

(山野) セッション@AもそうなのですけれどもセッションBで、観光マネジメントというのは、僕はそんな表現では特に意識は、言葉としてはともかくとして、考え方はずっと持っていたつもりでいますし、当初から庁内でも、八田さんも含めてですけれども、ターゲットを絞ってやっていこうと。ただ、われわれの手の届くレベル、範囲の中でということで、例えば雑誌を読むその雑誌のターゲットということで、女性誌でいえば「家庭画報」とか「婦人画報」とか「和楽」だとか、男性でいえば「サライ」だとか「日経おとなのOFF」だとか、そんな編集のところにいろいろな案内を届けたりとか、記事にしてくれたらお礼に行ったりとか、金沢のいろいろな情報を伝えたりとか、そんなことはしてきましたし、海外にしてもフランスとイタリア、特にイタリアはさらに新婚旅行というところにぐっと絞って、民間の旅行社とコラボをしてやってきたりはしています。しかし、それではやはりまだ甘いと思いますし、やはりマネジメントという意味では、押さえ付けるという意味ではない規制、規制という表現は適切ではないのかもしれませんけれどもそういうことも、宿泊税は決して規制のつもりでやったわけではないのですけれども、一部の方々からそういう厳しい声もありました。ただ、浅田さんから今、皆さんにはご理解を頂いているというお話でしたし、あるいは条例などを施行してきたところではありますけれども、それをやはり総合的に、文字どおりマネジメントしていく、そんなセクションが必要ではないかと、米沢さんからもご指摘を頂きました。大切な視点だと思いますし、方向性は全く一緒だと、全く同じ方向性を持っていると思いますので、それをこれからどんな形にできるのか、少しお時間を、宿題として預からせていただければと思います。

(福光) 佐々木フェロー、一言お願いします。

(佐々木) 何となくまとめなければいけないかなと思いながら考えていたので、3点ぐらいお話しさせていただきます。一つは、ずっと観光の話をしてきましたが、観光が経済をリードするハワイ。京都と金沢は文化が観光をリードするまち。そして、ホテル税とか宿泊税の財源でまた文化へ再投資していくという良い循環をつくっていくということになるのだろうと思うのです。実は私はこの数年間、文化庁の京都移転と工芸館の金沢移転にたまたま関わりました。その結果、京都はこの国における文化首都と名乗れますよね。なので、次は世界の文化首都を目指せと。そのためにパリと組むということで、非常に今、良い関係をつくっています。例えばパリに行くと、皆さん必ずまず最初にルーブルに行くでしょう。でも、京都の場合はそういう美術館がまだないので、今度、京都市美術館が現代アートも含めて来年オープンします。
 では、金沢はどうするかといえば、金沢は工芸館が来ますから、この国における工芸文化首都と名乗れます。だから次には世界工芸文化首都を名乗るということになります。これが目指すべき方向です。そうすると、工芸の概念を広げなくではいけない。伝統工芸だけでなくて現代工芸もあるし、さまざまなジャンルにずっと広がっていく。工芸的にものづくりです。産業も工芸化していくということに恐らくなってくるだろうと思うのです。
 こういうまちで、まず最初に旅人が訪れるのは、かつては兼六園だった。けれども今は21世紀美術館を目指してくる人たちが増えてきています。ルーブルみたいにとは言わないけれども、でもポジション的にはルーブルの別館を設計したSANAAが、その前に設計したのが21世紀美術館ですから、完全にルーブルと同格だとは言わないけれどもそういうポジションになってきている。そうすると、中心にある美術館は今のままでいいのか。15年うまくいったけれども、岡さんが観光地は廃れるという話をしていましたよね。21世紀美術館のセカンドステップへのビジョンがはっきりしないままでいいのだろうか。そこのところをはっきりさせないと、指定管理の枠の中に何か押し込めるという窮屈な話をすると、ちょっと順番が違うのではないかということを考えました。
 それで、実は私は9月から、20年ぶりに金沢大学へ戻りました。この戻った意味は、金沢大学に観光研究センターを作るためです。星稜大学はもちろんそうです。金沢の大学でこれまで観光研究をしている人たちは少なかったのだけれども、どんどん集まっている。この人たちと民間のセクターと行政、これがクリエイティブな創造型の観光研究をするということが、次のターゲットになるかなと思っています。以上です。

(福光) 観光マネジメント本部の重要なメンバーが佐々木さんになりそうだということでございます。顧問がミツエさんということで、最強です。市長さんが本部長ということになるのだと思います。これで議論を全て終了したいと思います。
 それでは、今からセッション@ABと、進行役リーダーを務められた方が提言をいたします。それでは、鶴山さん、セッション@の提言をお願いします。

 

 

 

 

 

 

提言発表

(鶴山) セッション@からは、改めて「都心軸にぎわい創出懇話会」の設立を提言します。金沢駅、兼六園口から武蔵・香林坊を経て、本多町へと続く都心軸のあり方を協議することを目的とします。組織の構成につきましては、金沢市が中心となり、石川県、学識経験者、経済団体、住民まちづくり団体でメンバーを構成する。活動内容ですが、旧都ホテル跡地、日銀金沢支店移転後の跡地、金沢歌劇座のあり方など、都心のにぎわい創出に向けて、具体的な利用・整備方法を含め、議論提言を行うことといたします。以上です。

(清水) 金沢市の文化施設における指定管理者制度の導入は、「金沢方式」での公募により、大胆な民間活力推進を行うことを提言します。「金沢方式」とは、学芸部門と管理部門、マーケティング部門を分離した公募方式で、学芸部門は金沢市が担い、管理運営部門とマーケティング部門である企画・集客・プロモーション・広報・サービスの分野を民間が担う、機能を分離して公募する方式を金沢方式とする。対象施設は、泉鏡花記念館、徳田秋聲記念館、室生犀星記念館、鈴木大拙館、金沢蓄音器館、谷口吉郎・吉生記念金沢建築館、金沢歌劇座、金沢市文化ホール、金沢市アートホール等。金沢方式導入の意義は、企画、集客、プロモーション、広報、サービスなどのマーケティング分野は、競争を導入し民間が持つ柔軟な発想による運営がサービスの向上や集客力のアップを生み出すことができるということです。以上です。

(米沢) セッションBの提言です。「金沢観光マネジメント本部」の設置。設立の意義は、観光客と市民、双方の快適性を保ち、バランスを取る。機能は、観光に関する政策を立案し、実施主体となる。観光客への啓蒙活動。構成は、本部長は金沢市長。構成団体は金沢市、観光に関するあらゆる機関・団体、経済界、市民の代表(町会連合会、婦人団体等)。財源は、行政からの支援のほか、宿泊税を財源とする。以上です。

(福光) ありがとうございました。「第10回金沢創造都市会議『まちづくりの課題 2019』」として、三つの提言を発表させていただきました。これをまたきっかけにして具体的な動きになればと思うところですが、この提言三つにつきまして、一応、採択したいと思います。賛成の方、拍手をお願いいたします(拍手)。
 ありがとうございました。それでは、この三つの提言を出させていただきまして、金沢創造都市会議の2019を閉じさせていただきます。閉会に当たりまして、閉会の挨拶を副実行委員長の米沢さんからお願いします。

    

 

 

 

 

 

 

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