第10回金沢創造都市会議

金沢創造都市会議2019 >セッションB

セッションB

持続可能な観光 〜観光マネジメントの必要性〜

座 長 : 福光松太郎 (金沢創造都市会議開催委員会会長兼実行委員長)
現状報告 : 八田  誠 氏(金沢観光協会副理事長)
紙谷 一成 氏(近江町市場商店街振興組合理事、ビジョン委員会委員長)
ゲ ス ト: 太下 義之 氏(文化政策研究者、独立行政法人国立美術館理事)
小林 茂樹 氏(国土交通省観光庁外客受入担当参事官付課長補佐)
ミツエ・ヴァーレイ 氏(ハワイ州観光局日本支局長)
進 行 : 米沢  寛 (金沢創造都市会議開催委員会実行副委員長)




DMOの理想形態と観光マネジメント

(米沢) 先日、京都市長の発言が新聞をにぎわせていました。どうおっしゃったかというと、「今まで誘致活動していた宿泊施設を今後お断りする」と。大転換です。彼の言葉は「京都は観光のための都市ではなく、市民の暮らしを大事にしなければならない」という趣旨で発言をなさいました。現実に、ヨーロッパでもバルセロナの新しい市長が当選してすぐに、市内で建設中だった6軒のホテルの工事を停止して、郊外に移しました。また、フィレンツェでも、もう既に市内ではホテルが建てられなくなっています。そういう中で、金沢はどこまでいっているのだろうと思っていますが、私の方から、若干、オーバーツーリズムではないかという問題を、先に提示させていただきたいと思います。
 まず、簡易宿所、いわゆるゲストハウスですけれども、新幹線開通前の2012年度末には23軒、ところが本年度6月の時点で204軒です。約10倍に増えています。そして、そのうちの6割に常駐管理者がいない。いわゆる申し込みはインターネット、そして入るのもインターネット上で暗証番号が送られてくる。そして、来た観光者はそのまま入れて、中に入るとキッチンとかダイニングテーブルがある。いわゆる食事とかは一切なくて、ツーリストがそのまま自分で賄うということです。そういうシステムなので、外国人が非常に多いわけです。そこで今、どういう問題が起きてくるかというと、外国の方が多いので、習慣や文化の違いもあるのでしょうが、夜、非常に騒がしいということや、もちろんゴミ出しで分別などしません。もう一つは、安全・安心といいますか、施錠してしまえば中で何が行われるのか分からない。そういう意味で、いろいろな町会で若干トラブルが起きています。
 次に、先ほどから出ていました都心軸ですけれども、金融街であった武蔵から香林坊・片町にかけて、両脇にホテルがずっと立ち並びました。しかし、問題なのは、それらのホテルのほとんどに車寄せがないことです。金沢は都心でありながら片側2車線、そして朝・夕方の通勤時間にはバスレーンがありますので、一般の車が走れるのは1車線です。しかし、ホテルに車寄せがないものですから、タクシーや自家用車が一時停止や駐車をします。ただでさえ混雑しているのに、大渋滞が起こっている様子が見られます。
 もう一つ、近江町。後ほど近江町の紙谷さんから現地報告がありますけれども、近江町も非常に観光客が増加して、大変混雑している中で食べ歩きをなさいます。近江町は「金沢市民の台所」と呼ばれていたのですけれども、大変混雑していて、その中で食べ歩きをされていて、市内の中心部に住んでいらっしゃるお年寄りが、ぶつかって転んだら大変だと、怖くて買い物に行けなくなった。一般の地元のお客さまが来なくなっています。
 そして、ご存じの東茶屋街、武家屋敷跡の大変な混雑。そして、それに伴っていろいろな店舗が入ってきますので、地価が非常に高騰しています。その地価の高騰ですが、先ほど言いました都心軸のホテル、そして一本裏通りにもホテルができているということで、その辺りでも大変土地が高騰しておりまして、先ほど申しましたとおり、昔から住んでいらっしゃるお年寄りの家の固定資産税が上がってきている。それで仕方なく家を手放してどこかへ移られるということが非常に多くなりまして、その後はみんなポケットパークになっています。私の方からは、そういう現状を提示しておきたいと思います。

 それでは、金沢観光協会副理事長兼専務理事八田さんに、金沢の観光と今後の方向性についてご説明いただきます。

(八田) 金沢市観光協会の八田と申します。今日は歴史と権威のある創造都市会議ということで、非常に緊張してまいりました。私は前座としまして、数値的なものを中心に、金沢の観光の現状報告をさせていただきたいと思います。
 私は実は前は市役所におりまして、市役所の中では創造都市であったり、あるいは鈴木大拙館であったり、いろいろ担当させていただきました。まちづくりの方が長かったのですけれども、先ほど大内フェローからもお話がありましたけれども、市役所にいたときも、観光都市などと言ったことはありません。やはり、われわれは創造都市でありそして歴史都市である。そう心に決めてやってまいりました。
 北陸新幹線開業2年前から、平成25年ですけれども、経済局長ということで、まさに観光のプロモーションをやらせていただきました。そのときの考え方は、金沢にある個性・魅力・強みをしっかり磨いていこう。それに興味関心のある方にしっかりお届けをして、金沢を楽しんでいただこう。そんな方針で取り組んでまいりました。そして、ターゲットは首都圏、女性、富裕層としました。首都圏、これは新幹線が通るので当たり前ですけれども、やはり金沢に合う層として、女性であったり富裕層、そういうところをメインターゲットとしてきたところです。
 新幹線の状況です。1年目が926万人、開業前、在来線に比べて3倍になりました。3月14日、開業の日、私もホームに行きました。1番目の列車が来ると、ホームが埋め尽くされました。これはどうなることかと思っておりました。2番目の列車、やはり一緒です。こんなことが開業年の5月のゴールデンウィークぐらいまでずっと続きました。当時を思い起こしますと、実は飲食店であったり、お土産物屋さんであったり、あるいはホテルであったり、かなりその対応にいろいろ苦労されたというような記憶があります。皆さんのご努力がいろいろあったおかげで、幸いお客さまの満足度は95%、その中でもとても満足が51%ということで、一定の評価は得てきたのかなと思っております。

 では、お客さまはどこから来たかというのがこのグラフです。石川県全体の発地別になっております。赤が首都圏です。首都圏は開業前240万人だったものが、昨年で言うと約420万人に1.7倍になっています。その隣が関西圏です。新幹線開業前の全国的なプロモーションもあったおかげで、実は関西も0.9%ほど伸びています。少し細いところがありますが、これが東北、いわゆる仙台などです。仙台まで3時間半ぐらいで行けることになりましたので、これも実は1.8倍に伸びております。

 その入り込み客をトータルしたものがこれなのですけれども、開業年で1000万人を初めて超えました。その後ずっと1000万人をキープした中で、昨年は1045万人ということで過去最高、これは開業前と比べると25%くらいお客さまが増えたという勘定になります。
 中でもこの伸びを押し上げているのは、実は外国人旅行者でございます。これは兼六園の数字なのですけれども、開業前は22万人であったものが、昨年で言うと42万人、1.9倍くらい外国人は増えております。

 先に宿泊の方に行きますけれども、昨年の年間の延べ宿泊者数が330万人です。外国人は平成26年と30年を比べると、32万人伸びています。全体で見ると55万人です。ということは、日本人の伸びは5年間で23万人、外国人が32万人ということになります。

 では、その外国人の方がどこから来られたかというグラフなのですが、赤が欧米豪でございます。全国の割合が左にあって、全国では欧米豪の構成比は16.4%ですが、金沢の場合、欧米豪が35.7%となっております。実は、金沢市および観光協会としまして、重点市場をどうしようかという中で、イタリア・フランス・スペインの三つを重点市場として取り上げました。かなり市長を中心としたプロモーション活動もしまして、その成果もあったのではないかと推測しています。
 実は、国別、都道府県別の宿泊者数は、昨年の数字ですが、イタリアが東京、京都、大阪の次が石川県です。それからフランスが6番目です。スペインは全国で7番目ということで、そういうお客さまはかなり来ているかなと思います。この9月、10月は、かなりオーストラリア、イギリスのお客さまが多かったように記憶しております。

 そして、市内の周遊観光地。これはアンケート結果なのですけれども、やはり9割近くは金沢城・兼六園、そして74%がひがし茶屋街、その下が近江町で69%です。

 公共施設しか入場者数は取れないのですが、この表でございます。まず、兼六園で言うと平成28年がピークでございまして、ここで開業前の約1.5倍になっています。そのうちの外国人だけを捉えますと、平成30年で1.9倍ぐらいになっています。その下に行きまして、東山にはいろいろな施設がありますが、これはその合計になっています。平成27年が一番多くて1.7倍です。その下、長町は1.8倍というふうに、この辺りへかなり集中してきたかなと考えております。

 もう一つ、RESASの中で、まちづくりマップにメッシュでドコモの基地局にアクセスした人がどれだけいるかを示せるというものがあります。それで少し見てみました。例えば1カ月でそこのエリアに何時に何人入ってきているかが分かるデータです。

 それを対比してみました。まず、11月の平日ということで、2014年11月と2016年11月を対比しております。

 月間合計では、例えばひがし茶屋街ですと開業前と開業以降で1.88倍になっている。21世紀美術館ですと1.43倍になっています。さらに、一番ピークの時間帯で見ます。ひがし茶屋街は13時が一番ピークなのですが、この時間帯で言うと3.33倍、21美で言うと2.18倍という数字になっています。

 同様に、これを休日で見ますと、この数字になります。ひがし茶屋街が月全体で1.32倍、21世紀美術館が1.25倍ということで、これもピーク時の方がやはり伸びが高いということで、ひがし茶屋街が14時で3.68倍、21世紀美術館が14時で2.25倍です。
 何を言いたいかと申しますと、金沢の観光の中でも、まず一つは場所の集中。人気のある場所に殺到するということが一つあるかなと。それにしても1.2倍とかそれくらいなのですけれども、もう一つ、課題としては時間、時の集中があります。ある時間帯に集中して押し寄せるという部分が非常に課題ではないかと考えております。

 実は、先ほど米沢さんから京都市のお話がありました。京都市が今のストップの前に打ち出している施策が三つありまして、季節・時期の分散化、時間の分散化、場所の分散化ということでございます。季節・時期の分散化というのは、繁忙期を少しでも長くしようとか、閑散期を少しでも少なくしようということで平準化していくことです。時間の分散化は、例えば、朝の二条城へ来てくださいとか、そういう形で時間を分散すること。三つ目の場所の分散化は、京都だけでなく、例えば大津の疏水に行ってくださいとなどということです。
 このようなことを京都市の方ではやっておられまして、金沢でも一応こういう考えは持っておりまして、西茶屋・寺町にも新しい魅力づくりをしましたし、日本遺産であります金石・大野の中を回れる仕掛けとか、そこへ行くアクセスの仕掛け、こういうものを少しずつ今やっているところです。

 今日はミツエさんが来ていらっしゃいますので詳しくはお話ししませんが、ハワイ政府の方でも「レスポンシブルツーリズム」、お客さまにちゃんと理解してもらおうというプロモーション、運動を、ずっと今やっておられます。実は先日、お話をお聞きしまして、われわれも当然こういうことは考えていくべきことと考えています。
 やはり、元々は市民あっての観光で、金沢がなぜうけているかというと、やはり市民がみんなでしっかり文化とまちを守って、それを良くしてきた。それに観光客が興味を持って、見たいと思うということです。今、欧米豪から観光客を呼んでいる理由の一つは、日本の文化に非常に関心が高い、そして文化多様性についての理解も深い、それから環境への配慮についての意識も高いためです。そういう人たちに入ってきていただいて、市民と交流をしていただいて、そしてそういう気持ちで双方が交流していくことができればと思っているところでございます。

 市民・お客さま・事業者の「三方良し」。そんな形になればいいなと思っております。簡単でございますが、報告を終わります。

(米沢) 大変よくまとめていただいて、感謝を申し上げます。それでは、次にもう一つ現状報告として、近江町の老舗の仲卸の社長紙谷一成さん、お願いします。

(紙谷) 近江町市場商店街振興組合からまいりました紙谷一成と申します。ビジョン委員会という一委員会を担当いたしております。それで、近江町を代表して報告せよということでございます。今、八田さんがデータを駆使してご説明されたのに対しまして、私はふわっとした話しかできませんが、ご了承いただきたいと思います。
 まず、最初に観光公害、オーバーツーリズムについてということでございましたが、確かに問題はありますけれども、近江町としては「観光公害」という言葉を発する、そういう問題提起をするのもおこがましいのではないかというレベルであります。といいますのも、毎年、近江町では交通量調査をしていまして、定点ですけれども、10月に実施しています。平成元年からずっと続けているのですが、ある10月の土曜に調査したところ、平成元年にポイントを通過した方は2万5000人でした。ところが、平成17年には1万5000人にまで減少していました。これは平成17年なので、新幹線開通も全く関係ない頃でございまして、要は閑古鳥が鳴いていたということでございます。それで、近江町市場が老朽化によって一部改装されます。それが平成21年、今から10年前ぐらいですけれども、そのときにいちば館がオープンしまして、2万5000人まで回復しました。要は、平成元年のレベルまで戻ったわけなのですが、その後また減少の一途をたどっていきます。そして、新幹線開通前にはその2万5000人が2万人弱になってしまっている状態から、新幹線開通で3万人ということで、一気に1万人の増、1.6倍に回復しています。なので、近江町としては、新幹線さまさまという状態なわけなのです。
 ただ、これをつぶさに見ていきますと、繁盛している店舗は飲食店が中心で、相変わらず生鮮を主体に販売している小売業は苦戦を強いられています。その中でも繁盛しているところはどういうことをされているかというと、観光客対応をされています。例えば、八百屋さんですと金沢の加賀野菜を中心に販売しているとか、フレッシュジュースを売るとか、あとは生ガキをそこで食べさせるとか、要はそういったことで観光客のニーズを捉えて売り上げに結び付けている。そういうことで、とにかく純粋な生鮮の物販は苦戦されています。ある青果店で本当に小売りだけでやっているところはかなり苦戦をされていて、新幹線開通後は逆に売り上げが下がったとお聞きしているところもあります。
 いろいろ、諸問題はあります。先ほどもご紹介があった食べ歩きですとか、ゴミのポイ捨て、商品を触ってカニの足がぼろっと取れたりといったこともあります。そういったことはマナーの啓発ということで、先ほども回覧していただきましたけれども、ポスターやチラシを場内に貼ったり、配布したりして対応しておりますし、啓発の放送なども場内でかけて対処しています。
 しかも、食べ歩きやゴミの放置といった諸問題を取り去ったところで、近江町が本来の市民の台所の機能を取り戻すかというとそういうわけではございませんので、本当のセンターピンをしっかり捉えていく必要があるということで、ビジョン委員会としては、とにかく近隣の、本当の地元の方を大事にする。高齢者の方もそうなのですが、さらに今後も金沢市で評価を頂く市場でありたい。本当の市民の台所であるべきということで、近隣の小学校それから幼稚園を中心に、今、回覧させていただいておりますけれども、近江町の食育事業「親子近江町体験」のPRをしておりまして、こちらについては金沢市の農政の方にもご協力いただいているところです。
 そういう取り組みですとか、あと近江町本来の楽しさというものもPRしていこうと、「お!のある暮らし」というものを作成しまして、金沢市内、公民館とか、あと要所要所でお配りしています。本当は抜本的な改革を早急にすべきところですが、こういう地道な活動こそ大事なのではないかということで、少しずつ活動しています。
 2021年には近江町は開場300年になります。それに向けて、また近江町一丸となって、歩みは遅くとも、しっかりと市民の台所というところで頑張っていきたいと思っております。ありがとうございました。

(米沢) お二方には後ほどまた討論に入っていただきますので、これから先は前に並んでいらっしゃる先生方から少しご発言を頂きたいと思います。
 今日はお仕事の都合で先ほど新幹線で金沢に着かれたばかりですけれども、小林茂樹さん。太下先生からご紹介いただいたのですが、何と観光庁の中にサステナブルツーリズムに関する部署ができ、そこに入れられたのが小林さんです。どういうことを今考えてやっていらっしゃるかを、少しお話しいただければと思います。

(小林) 今ご紹介いただきましたとおり、観光庁の、私の部屋は外客受入参事官室という名前で、一番コアな業務は、外国人が日本に来て困らないかという視点で環境を整備することです。例えば、言葉が通じるかとか、トイレが和式だったりすると困るとか、あとはWiFiが飛んでいるかどうか。それが一番中心的な業務で、われわれは持続可能な観光を実現したいと思っているのですけれども、持続可能な観光推進室というのが観光庁の中にできて、その事務局機能を担っている部署になっています。
 観光先進国という言葉で官房長官以下、まさに必死で取り組んでおりますけれども、総理ヘッドで決めた観光ビジョンが平成28年にあって、そこで来年4000万、10年後6000万という、これをこの場で言うと皆さん心配そうな顔をされているのは非常によく分かっているのですけれども、そういうものを目指していくという中で、外国人を呼びたいのですけれども、特定の地域を犠牲にしてそういったものを達成しようとは全く思っていないわけであります。物理的にも、例えば京都に非常に大きな負荷をかけたまま6000万というのは難しかろうと思っておりますので、まさに幅広い地域に行っていただくということであるとか、今日こういう場にありますような、自分たちと観光との付き合い方をどうやってやっていくのかという観光マネジメントの議論を地域とやっていきたいと、国としてもやっと重い腰が上がったところです。幾つか資料を持ってきましたのでお話ししたいと思います。

 石川県全体のデータです。外国人の訪問率でいきますと2.1%というところで、これは複数回答ですので重複はあるのですが、全国で19番目となっています。

 そして、延べ宿泊者数。これも県単位なのですけれども、このぐらいのレベルになっています。緑は国交省北陸信越運輸局管内の他の県ですけれども、長野県が多い、あとは新潟がきて石川、富山というふうになっているということであります。延べ宿泊者数が非常に増えているということが分かります。

 先ほどのお話にありましたが、新幹線開業の平成27年の52万人泊から97万人泊というふうになっておりますので、約倍近い伸びになっているのかなと思います。

 日本全体で見ますと、平成27年の外国人、インバウンドの数が2000万人弱で、昨年は3119万人で1.5倍ですので、それよりは多い伸びなのかなとは思っております。
 今、欧米豪が非常に多いという話がありましたけれども、全くそのとおりであります。また、台湾の割合も、全国に比べても台湾の方が多いということになっておりますし、特にオーストラリアも多いというふうに聞いております。そういった人たちはスノーリゾートというか、雪の関係でかなり楽しんでおられるというふうに聞いております。

 これは性別と年代です。あまり関係ないかもしれませんけれども、あえて年代で言うと40〜49歳の割合が多いということで、一般的には、こういった年齢層の方というのは、思慮深いであろうと思われます。

 入国と出国の空港を分析しますと、成田空港にいらっしゃる方、もしくは羽田空港にいらっしゃる方は、新幹線で来られるのかなと思いますが、中部空港であるとか関西空港、あと小松空港の割合もなかなか多いのかなと思っています。

 これは直行便の要因もあると思っていまして台北便、上海便がある。ソウル便がなくなってしまうという話があるのですけれども、そういった要因によるのかなというふうに思っております。ですので、いろいろな情報を総合すると、恐らく欧米の方は成田空港から入ってくるのではないかと推測できるかと思います。

 これはクルーズですが、まだこれは参考かもしれません。金沢港に非常に多く来ておられるということになっています。

 われわれがこの持続可もちろんいろいろな要素があるのですが、一つの要素として注目すべきは、消費支出です。来て、楽しんだけれども、例えば無料で入れる観光地に来てしまって地元にお金が落ちないというのも、良くない影響の一つになっております。消費額を増やすということも非常に重要だと思っておりまして、石川県全体でいくと大体1人当たり2万円の支出があると分析しております。
 その内訳なのですが、宿泊費と飲食費が全国平均よりも高いと考えています。私も今日、金沢に初めてお伺いしたのですが、非常に高級な宿泊施設が多い印象で、恐らくそういった要因もあるのかなと。他方、買い物代は、これはあくまで割合なのであれですけれども、全国平均より若干少ないのかなと思っております。

 そして、これはもう純粋な算数であるということはよく理解しておりますけれども、外国人の方がこれだけ来ているということを、石川県の人口1人当たりに換算すると、1人当たり大体1.3万円、外国人からお金をもらっていることになるはずなのですけれども、これが一般の方に落ちるか、特定の方に落ちるか、地元に落ちるか、東京の系列の企業に落ちてしまうかというところが大きな問題であろうと。

 次に、観光庁の取り組みについてお話ししたいと思います。

 先ほど冒頭に申し上げましたとおり、まさに国として、遮二無二インバウンド施策に取り組んでおりまして、おかげさまで急速に外国人の方が増えておられます。他方で、混雑、マナー違反関係の課題、もしくはご指摘が非常にいわれはじめている。特に、マナーというのが非常に難しいなと、私もいつも思うのですが、われわれの生活を確かに乱してほしくないという気持ちはあるのですけれども、文化が違うので、本当はお互いに歩み寄っていくべきなのかなというふうに思うこともあるのです。ただ、ゴミ出しとかそういったものはまさにルールであるし、犯罪行為に至るようなものとか、当然駄目なわけです。受忍できない限度のマナー違反がある場合には、しっかり「駄目なものは駄目だ」というふうに言わなければいけませんが、そこはわれわれがどう観光とうまく付き合っていけるかどうかというところだと思いますので、非常に力加減が難しいのですが、一生懸命考えながらやっていことであろうというふうに思っています。
 観光庁としては、昨年の6月にさまざまなご指摘を踏まえまして、観光庁長官をヘッドにした本部を作り、さまざまな事例を勉強させていただきまして、1年間かけて取り組み方針をまとめました。4000万・6000万という目標はゆるぎなく達成をしたいわけですが、特定の地域に過度な負担を掛けることがない状態でこれを達成すべきということで、「持続可能な観光」という概念に着目した取り組みを進めています。

 具体的に言うと、非常に観光客が集中しているエリア以外のところのプロモーションをするとか、あとは観光客が集中してしまっているところ以外の地域で例えば多言語対応をする、外国人が来やすい環境にするとか、は圧力を下げていくようなベクトルをやっていく。
 もう1点は、観観光地ではないということかもしれませんけれども、観光と地域の付き合い方を考えはじめませんかということなのだと思います。観光には、経済的なメリットもある一方で、自分たちとは違う人たちがやってきて、それに伴うネガティブな影響も出てきてしまう。それをどう評価するのかを議論をしていくことが大事だと思っていまして、自治体であるとか、DMOという組織を一生懸命盛り立て一生懸命地域における観光との付き合い方を考えていきましょうということです。
 具体的な取り組みとしては、モデル事業などで観光地の混雑・マナー対策をやっていくということ。これは後ほどご説明します。もう1個は、今、八田さんからも非常に多くのデータを頂きましたし、私も幾つかご紹介しましたけれども、ポジティブなものもネガティブなものも含めて、観光と地域のあり方を考える際に必要なデータが分かるような、指標づくりをやっていきたいと考えています。

 これはご参考ですけれども、地方自治体に昨年アンケートをいたしました。これは全体の傾向なのですけれども、「どういった課題があるとお考えですか」と聞いたところ、マナー・ルールに関しては、トイレの利用に関するもの。ゴミに関するもの。あとは立ち入り禁止区域への進入などですね。私道に入ってきてしまうとかそういった類のもの。そして渋滞関係、ゴミの関係とか、宿泊施設が足りないという声もあったり、日帰り客が多くてお金が地元に落ちないという問題等々、このような課題が認識されています。

 対策としては、地元産品の活用促進であるとか観光客の分散、もしくはマナー啓発のポスターなどに取り組まれています。

 京都や金沢は、まさにオーバーツーリズムのご指摘を頂いているところですけれども、日本全体というか、国レベルでいくと、観光をもう一切、1人も受け入れられませんというほどではないのではないかというのが、この22ページです。これは国連の世界観光機関が取ったサーベイです。これについてもいろいろな議論があるのは承知した上であえてご紹介いたしますと「観光があなたの住むまちにどういう影響を与えているか」という問いに対して、わが国の聞かれた方の回答は、ポジティブなものもネガティブなものも他国と比べると低い。「観光をマネジメントするために何かの対応が必要だと思うか」という問いに対する回答もある意味低いという結果になっています。

 まさに急激なインバウンドの成長痛が、国全体というよりは特定の地域において発生しているということではないかと思います。観光マネジメントが、非常に重要になってくると思っています。

 具体的な取り組みについて少しご紹介しましたが、「観光指標」という少しイメージしづらい言葉でお伝えしたのは、わが国の持続可能性を測定・監視・改善していくためのツールの一つとして、ポジティブな側面だけでなくネガティブな側面も含めて実態把握するためのものを考えています。
 今年度いっぱいで案ができたらなと思って進めているところなのですが、ポジティブな影響としては消費額とか観光関連の従事者数。他方、ネガティブなものとしては混雑の状況であるとかマナー違反の件数であるとか、もしくは犯罪関係もあるかもしれませんけれども、こういったものを、ある意味価値中立的に把握するということかなと思っております。

 取組事例で、先ほど京都のお話も幾つかありました。三つの集中というようなことでお話があったと思います。われわれもよく京都市と議論をしながら政策を進めてきていまして、今後、金沢市ともよく連携をしていきたいと思いますが、昨年度、京都の嵐山という非常に混雑している地域で、外国人の方が持っているスマートフォンがWiFiに接続したらそれを1人としてカウントするという仕組みで、WiFiに接続したスマートフォンの数が多い所は赤く塗って、少ない所は青くして、どのぐらい今混んでるかを見える化するということをやりました。
 こういった表示をウェブサイトであるとか京都の駅前に出しまして、今は混んでいますよということをお伝えした。これを見て、結果として「混雑する時間はやはり避けたい」「空いている場所に行きたい」といった行動変化を促すような認識は得られたということで、こういった取り組みが一つあるかなと思っています。
 去年は国の実証事業でやったのですが、今年、京都市の方でこれを引き継いでさらにグレードアップして、今混んでいるかどうかだけではなくて、過去のデータとも突き合わせると、例えば「いついつ」というふうにカレンダーを押すと、その日、どの時間帯にどれくらい混みそうかが分かるとか、そういったものになっています。

 あとはマナー違反の関係で、これも京都の事例で恐縮ですが、先ほど近江町の事例としてご紹介があったようなマナー違反の関係が、祇園でも非常に多くいわれています。特に、祇園には舞妓さんがいらっしゃって、そういう人たちを追い掛けるとか、一緒に写真を撮ってしまうとかということで、迷惑行為が多発しているということなので、このエリアに入った瞬間に、外国人の方のスマートフォンにマナーの啓発文書を送るというようなことをしています。これはポスターを携帯電話に送るようなシステムで、あとは巡視員の配置であるとか、こういったことをやりはじめているような状況になっています。

 特定の施設の混雑緩和については、いろいろ事例がありますけれども、ここ金沢でも21世紀美術館が、昨年、入場時間指定券を販売された事例もありますし、あとはミラノの事例であるとか、事前予約制を入れることによって混雑緩和をしているというようなものがあります。

 政府全体の取り組みとしては、10月にG20の観光大臣会合というものが初めてありました。私も現場に行ってまいりましたけれども、経済成長の牽引と持続可能な開発に観光は貢献できるだろうということを改めて確認しました。また他方で、持続可能な観光というのが非常に重要であって、各国の知見をお互いに共有しましょうというようなことがうたわれています。

 それがこのページですが、「持続可能な観光」というのは非常に大きな概念で、いわゆるオーバーツーリズム以外にも、女性の活躍であるとか、海洋プラスチックゴミ対策であるとかといったもの、一番重要だと思っていますのが観光客と地域住民の双方に配慮した観光マネジメントを促進するということで、それが国際的な合意としてうたわれましたので、今後、わが国としてもしっかりそれに取り組んでいきたいというふうに思っています。

 少し拙いですけれども、われわれの勉強した結果を、こちらのURLでご紹介しております。国内外の事例も載せておりますので、もしご関心がおありでしたらご参照していただけると幸いです。私からは以上です。

(米沢) それでは次に、ハワイ州の現状をお伝え願いますけれども、ミツエ・ヴァーレイさんは、実は金沢生まれでいらっしゃいます。それではお願いします。

(ヴァーレイ) はい。皆さん、ALOHA。今回、長崎に入って、福岡へ行きまして、そのあと東京に行って、今朝、金沢に入りました。久しぶりに実家に帰省できて、大変うれしく思っています。金沢が人生の半分、そしてハワイが半分ということで、金沢とハワイにしか住んだことがないのですけれども、外に出て初めて、金沢の良さというものを本当に感じています。ちょうど先月、ハワイの石川県人会の理事にも加わらせていただきまして、新しい次世代のプロジェクトチームを立ち上げて、ハワイでも金沢のお料理教室や、そして次世代の金沢の歴史ということで、前回来たときには金沢検定の本やいろいろな本も買わせていただきました。今回、この会議で本当にレベルの高い協議をされていることに驚いたと共に、大変感謝いたしました。これが20年続いている、やはりさすが金沢だなと、ふたたび自分の故郷に対するプライドが、すごく高まった状態でございます。

 私はハワイ州観光局の支局長として、東京とホノルルのオフィスの両方を統括させていただいておりますが、ハワイのDMOとしての取り組みで、ここ3年ぐらい、北海道から沖縄まで、日本のいろいろな自治体の方々との情報交換をやらせていただいております。それから、視察団が大変多いです。ハワイは世界の観光地として、アイルランドやニュージーランド、それからスペインとも、持続可能な観光に関してはいろいろな情報交換をさせていただいております。

 最初に少しハワイの組織の仕組み、次にハワイの現状、そしてなぜ今サステナブルツーリズムではなくてレスポンシブルツーリズムをやっているかということを、少しお話しさせていただければと思います。

 まず、ハワイ州ですけれども、もちろん観光産業は3大産業の一つです。不動産、それから商業では、中小企業が大変多いです。それから、空軍・陸軍・海軍全部ありますが、その中でも5人に1人は観光業に従事しているというぐらい、大変大切な産業になっています。そして、1日当たりの税収入が6億円あるということで、大変大きい産業です。人口は140万人ぐらいで、その80%がオアフ島に集中しています。

 これが、私どもDMOのハワイ州政府関連機関の組織になります。石川県と横並びにして考えていただいてもよろしいかと思うのですが、ハワイ州知事オフィス、知事のオフィスがありまして、その下に経済開発観光機構が付いております。その横付けでHTA(ハワイ・ツーリズム・オーソリティ)、これが州観光局ですね。そしてハワイ州議会、ここで予算が決まりますので、ここがトップの自治体という形になります。
 HTAの中に一番最初にありますハワイアンカルチャー、文化の継承保存についての課がちゃんとあります。そしてブランドマネジメント。そしてコミュニケーションアウトリーチ、これは実際の地元の方との連携です。そしてツーリズムリサーチ。それぞれにディレクターがおりまして、それぞれに予算も分割されております。
 さらに、このブランドマネジメントの中にターゲットエリアが10個ありまして、それぞれそのターゲットマーケットエリアのエキスパートと委託業務契約を結ぶ形になっております。ですので、私どもハワイ州観光局は日本を担当させていただいておりますが、5年ごとの競合コンペで、普通の州のスタッフではなく、私もマーケティングエージェンシーの一つの会社で委託をしていただいているという形です。

 それともう一つ、ハワイでは六つの島にお客さまが訪れることができますが、ハワイ島観光局、カウアイ島観光局、マウイ島そしてオアフ島、それぞれの島のステークホルダー、企業の皆さまと連携する形で島の観光局があります。この縮図の中で、しっかりHTAが観光戦略を組みます。昔は10年戦略を組んでおりましたが、今はトレンドがすごく速く変わるので5年戦略で、そして私どもが短期の1年ごとのマーケティングプランを出していくという形になっています。

 その中で、日本と違うのは、このHTAは州の機関なのですが、ボードメンバーがおりまして、全て地元の経済界のリーダーの方々が入っております。今13名おられますけれども、このHTAの予算も、それから観光戦略も、全てそのボードメンバーや業界の方々の声を拾い上げて決められて、監視の縮図ができている形になっています。

 そして、HTAのミッションは、もちろん商品開発や観光産業の向上なのですが、もう一つは、労働雇用の創出です。ハワイでは、やはりハワイの若年層の方々が本土の方に行かれてしまうので、どうやってしっかりと労働雇用を創出していくかというところです。それともう一つは、自然資源の保全です。大変気候も良く、そして歴史も文化も食もあるところですので、この継続維持。そして、州民の生活向上。実を言いますとこのミッションの中では下の二つがハワイ州にとっては大切だということで、この理解を全ての業界の中で統一して、毎年これを連呼している形でございます。

 もちろん効果測定もあります。一番大切なHTAの効果測定は、コミュニティの理解度、要するに観光産業が今どういう状態になっているか。そして、どういったことを一緒にやっていったらいいかという満足度の向上というものを必ずリサーチしておりまして、企業の方々、それと州民、そして来るお客さまにアンケートを取っております。
 そして、ハワイ訪問者の消費高。私どもは人数というよりは、消費高と滞在日数、そして航空座席、これが一番厳しいKPIになっております。日本マーケットにおきましては、来年、羽田のスロットが拡大するに当たりまして、アメリカの線が大変増えました。その中のほぼ半分をハワイが頂きまして、デルタさんも成田から羽田に来ましたし、JALさんも日本一ホノルル直行便が増えました。そして、ハワイアンさんも1便増えたということで、かなり関東圏の情勢が変わってくる、大変エキサイティングな年になります。そして、オリンピックもあって、サーフィンも入ってくるということで、プロモーション、マーケティングという意味合いでは、いろいろな活動をしていく年になるのですけれども、その中でも今レスポンシブルツーリズムになぜ力を入れているかということについては、後ほど少しお話をさせていただきます。

 そして、ステークホルダーとの連動なのですが、日本での活動としては、必ず3カ月に1回、ホテルの皆さま、アトラクションの皆さま、そしてPR担当の皆さまと、どういった状況で、数値がどうで、そして何をやっているかを必ず報告させていただきながら、アイデアを吸い上げ、コミュニケーションを取ったり、一緒に活動できるプロジェクトを必ず作っています。
 年に2回総会がありまして、全コントラクターがヨーロッパ、アメリカそして中国、韓国、台湾から集まります。そして、そのアップデートとマーケットの状況の発表会があります。ステークホルダーの方々からの質問に答えたり、どういうふうに参画できるかという形で協議を行うものが年2回あります。

 大切な財源なのですけが、私どものマーケティング予算は、全てホテル税から来ています。そのホテル税が、今は10.25%なのですね。もう1950年代からホテル税を導入しており、5.6%から始まりまして、去年、9.25%から10.25%に上げております。それが年間600億円あります。その60%ぐらいは一般予算へ行って、どこに使われているか分からないのですけれども、観光予算は今の為替の換算でいきますと82億円ぐらいですかね。毎年、この金額を観光予算に、HTAの予算に付ける。昔はパーセントだったのですが、今はこの金額でセットされています。

 その金額の内訳がこれになるのですけれども、ほぼ60%は、もちろん全マーケットに使うブランディングになります。マーケティング、ブランディング、そして32%が地元のカルチャー、スポーツ、コミュニティ、自然保全、そしてセーフティということで、これだけでもかなりの予算を投下しております。

 その中で、三つすごく大切なのが、ハワイアンカルチャーの維持。そして教育、次世代を教育するというところにものすごく力を入れております。あと、コミュニティ・エンゲージメント・プログラムというのは、現地の方が「コーヒーフェスティバルがしたい」「ファーマーズマーケットをもっと大きくしたい」などと、小さいイベントでもいいので、とても地元の産物を助けるようなイベントには補助金を出そうということで、毎年、たくさんのニッチなイベントや小さなファーマーズマーケットにも補助金が下りております。
 自然保全プログラムは、今、特にレスポンシブルツーリズムをやるに当たりまして大変重要なエリアで、ハワイの固有種を守っていくこと、森林を守っていくこと、水源を守っていくこと、そういったものに約20億円の予算をホテル税から投下しているという形になっています。

 これは世界の観光人口です。ウェブサイトに出ているものをグラフにしただけなのですけれども、今はこれだけ世界の観光人口が増えていて、2030年までには18億人になるといわれています。そして、今は先進国が観光デスティネーションとしてシェアが大きいのですけれども、2030年ぐらいには逆転するだろうといわれています。こういった観光のトレンドは、国内のみならず世界で見ていかないと、トレンドがどんどん変わる、もしくは客層が変わる。そして、国内もしくは州内のライフスタイルが変わっていきますので、いろいろなデータを見ていくというところで、いろいろなデータを私どもも勉強しながら分析をしております。

 これは、私どものインバウンドです。世界各国をターゲットにしておりますが、アメリカだけでもう65%です。ですので、アメリカの経済にものすごく左右されます。そして、2番目に大きいのが日本マーケットの16%です。その後にカナダ、オセアニアで、中国、韓国は、まだ中国も1.5%いっていないですし、韓国も今大体2%ぐらいということです。
 ですので、今のハワイ州の体制は、アメリカ重視です。特に東部、東海岸の方は大変お金を使われます。消費額が全く違います。それと、日本に関しましては、やはり企業の投資も一番多いですし、観光のレジャーというだけではなくMICEという視点からも、それからビジネスという視点からも、日本はハワイにとっては大変大切な地域になります。

 日米カウンシル、特にIBMの社長を務めていらっしゃいましたポール与那嶺さんは、ハワイと日本のビジネス関係を有効化するために、今いろいろなプロジェクトを立ち上げていらっしゃいますし、特に自然資源、再生エネルギーに関しましては、ハワイは沖縄と静岡とMOEを結んでいろいろとやっております。

 今、人口が140万人のところに年間996万人のお客さまが来ているということで、黄色信号が出ています。それはどういうふうに分かるかというと、これはハワイ州民のツーリズムに対する満足度リサーチというものです。一時期、78%、80%ということもありました。景気があまり良くないときとか、苦しいときは、大体こうなるのですけれども、今の59%というのは、歴代で一番低いのです。

 州としましてはこれを黄色信号と捉えておりまして、マネージングツーリズムという形を取っています。オーバーツーリズムという言葉は私どもは一切使うなと言われておりまして使いませんし、どういうふうにマネジメントしていくか、マネージングしていくかということを考えていこうということで、2年ぐらい前からレスポンシブルツーリズムという言葉を使いはじめました。

 このレスポンシブルツーリズムなのですが、まず、傘下としては、一番上にサステナブルツーリズムというものがもちろん付きます。持続可能な観光ということでワールド・ツーリズム・オーガニゼーションが提言しております。その下に、ケープタウン宣言というものがあります。これは、責任ある旅行者になるために、どうしても観光人口が増えてきますと、それなりにいろいろな影響が出てきて、例えば特に環境面に悪影響が及ぶわけですが、それをどうやって最小限に抑えられるだろうか。もしくは、文化遺産の保全。これはハワイにとっては大変大切なことなので、金沢もそうだと思いますが、やはり来る前に知っておいてほしいこと、そして尊重してほしいこと。私どもは富裕層とかという言葉もあまり使わないようにしておりまして、アビットトラベラーもしくは質の高い旅行者とは何ぞやと言ったときに、海外旅行に大変興味があって、年に1回は海外旅行に行かれるお客さまで、文化や教育に大変関心が高い。そして、自分のヘルス&ウェルネスに大変関心が高い。そういった興味の高いお客さまのことをアビッドトラベラー、そして質の良いお客さまと定義して、そういうお客さまに早めにいろいろな啓蒙活動をすることによって、「ああ、ハワイに行ったらこういうことをやってみよう」「ハワイってこういうところなんだ」「じゃあ日系移民の歴史、日本で学べないものを学んでみよう」と。そういったいろいろな啓蒙をして、目的を持って来てもらう動機付けを、今一生懸命やっているところでございます。
 少しビデオを見ていただければと思います。

***ビデオ上映***

 先ほど、20億円も地元のカルチャーの保全、それから自然の保全にかけている、補助金を出していると話しましたが、どういったものに使うかというと、やはり日本にも職人、マスターがいます。ハワイも同じです。やはりプロの方々や、ずっと伝統を受け継いできた方々が次世代を育てていかないと、文化というものは継承していけないということで、その教育プログラムにものすごく力を入れています。
 特にハワイ語もそうなのですね。ハワイアンの方々もindigenous peopleですので、ハワイ語が話せる方が2500人ぐらいまで減ってしまったときに、これではいけないとルネッサンスが起き、そしてハワイ語の学校ができて、今は2万5000人の若い、20代の人たちがハワイ語を流ちょうに話せるようになって、そういう人たちがパッションを持って次の世代の子どもたちに自分たちのプライドを持つこと、文化を継承していくことの大切さを教えています。そういったプログラムにどうやって観光でもたくさんの方に参加していただけるかということで、現地の成長している次世代のリーダーのNPOの方々と商品開発をしていったり、地元を伝えたい、こういうことを伝えたいと思う方々と観光客をどうやってつなげるかというところで、ものすごく現地でいろいろ動いています。その他に、私どもはマーケティングという意味合いではインマーケット、日本でメッセージを伝えていくという形で、新しくマラマハワイレスポンシブルツーリズムというページをウェブサイトで作っております。
 あまり時間がありませんので冒頭だけお見せしますが、こういったビデオを20〜30本作っています。

***ビデオ上映***

 いろいろなメディア媒体によって15秒、30秒のこのような縦型動画、横型動画を用意して、旅行会社様用にはDVDを作って全店舗で流していただけるように配布させていただいたり、キャリアでは機内ビデオに入れていただいたりということで、たくさん拡散して、しっかり知ってもらって、尊重していただく。けれども、「これをしちゃいけない」「あれをしちゃいけない」という言い方ではなく、現地の人たちが自分たちのライフスタイルを見せて訴える。「私たちもこれに気を付けているので一緒にやりましょう」というメッセージを流すという形で今取り組んでいます。

 その他には、私ども観光局としては、やはり森林を守るために、例えばコアの木というのは固有種なのですが、それを植えて、GPSを付けて、自分の木の成長をコンピュータで見られるのです。なので、植えに来たり、もしくは代わりに植えて差し上げて、後ほどその木を見に行くというプログラムを作ったり、もしくは日本で言う里海・里山、ハワイにもアフプアアという自給自足の生活実態がありました。昔は四百何十個あった養魚池が今もう数十個しか残ってない。その復旧をいろいろなNPOが頑張ってやっている。どろどろになりながら昔の養魚池を復旧するという子どもたちの教育事業を教育旅行のプログラムに入れて、MICEの一つのニッチプログラムにする。もしくは、ホクレアというカヌーが世界一周をしました。この方々は海のグローバルウォーミングなど、特に海に関する教育事業を次世代につなげる。太平洋の航海が2021年から始まりますが、日本にも来ます。こういった方々の映画を日本全国で上映して、特に姉妹都市で高校生たちの交流をしたりする。そのような形で、観光局として、観光をベースにそういったメッセージを次世代に流していきます。

 今、日本でもSDGsが大変話題になっているかと思います。私どもは国連のLocal 2030というものに選ばれているのですけれども、日本では静岡が入っているかと思います。ハワイはアメリカのリード州として、国連のSDGsの下で2030年の目標を決めました。Local 2030の中にAloha + Challengeというものがありまして、クリーンエネルギー、自然資源の管理、スマートコミュニティ、廃棄物。特に自給自足率が今、ハワイは10%なので、それを2030年までに20%にするなど、全部に目標を掲げています。
 これが何でここに出てくるかというと、先ほどから申し上げていますように、ただ持続可能と言っても、やはり経済と観光、地元の生活向上が連動しないと、なかなか持続しづらい。ということで、今までは経済開発観光局と観光局はそれほどにつながっていなかったのですが、このSDGsを通して、再生エネルギーや自給自足の運動、地元のNPOの方々と一緒に社会貢献できるMICEのグループ誘致のプログラムを作ったり、日本企業からの投資といったものを入れて、社会貢献できるSDGsの傘下のプロジェクトを増やしていくというサポートを、今、観光局としても経済開発観光局と一緒にやっている状態です。

 再生エネルギーでは、ちょうど先月、再生エネルギーサミットがありまして、日本の教育改革、文科省と一緒によくこの仕事をするのですけれども、スーパーサイエンススクールとか、そういったグローバル人材事業にかなり補助金が出ています。そういった学生をハワイに連れてきて、他の国の子どもたちと一緒に環境について問題提起をして、アクティブラーニングでプレゼンテーションをして、そしてディスカッションをして、プランを作るというものに実際に参加してもらって、学校の先生も呼んでFAMツアー、視察をやっています。

 もしくは、サステイナブル・コーストラインズ・ハワイと一緒にビーチクリーンナップを行う。今は海洋ゴミベルトというのもありまして、今も震災のゴミが全てハワイ島の南のビーチに届きます、流れてきます。それをクリーンナップして、クリーンナップするだけではなくてゴミを分別して、何が一番サンゴに悪いのか、魚に悪いのかを調べて勉強するということを、ニュージーランド、オーストラリア、そしてハワイ、日本の子どもたちと一緒にやっています。

 子どもたちはハワイからゴミを持って帰れないので、日本の寺院さんが9月にずっと日本でビーチクリーンナップをやっていました。そのゴミをもらってきてカメを作って、大阪のツーリズムEXPOの私どものパビリオンでそのカメを飾って、「ハワイでカメを見たら3m以上近づかないでくださいね」という啓蒙をやりました。そういういろいろなやり方があるという事例など、皆さんといろいろと情報交換をしながら、新しい観光のマーケティングについて考えていこうということです。
 やはり私はここ出身なので、金沢に大変パッションがありますし、諸先輩方もたくさんこちらにいらっしゃるので、ぜひ今後も情報交換をさせていただきながら、ハワイでいい事例があれば、ぜひ共有させていただければと思います。ありがとうございました。

(米沢) さすがハワイは観光の最先端をいっているなということを改めて感じました。それでは、お待たせしました。創造都市会議の準レギュラー、3回目です。太下先生、お願いします。

(太下) 
 「持続可能な観光」ということで、観光マネジメントの必要性についてお話しするのですが、冒頭で座長の米沢さんからもお話があったとおり、実はこれは世界的にすごく大きな問題になっています。スペインのバルセロナ、そしてイタリアのベネチアで、住民が観光に対して反対するデモが起こる。そして、今まででは考えられない極めて強い規制が生まれているという状況があります。日本の事例は先ほど小林さんの方からも紹介がありましたが、京都などでもそういう動きが出てきているわけです。そういう中で金沢のことを考えていく。こういう局面にわれわれはいるわけです。
 これは個々、ミクロの都市における事象であって、一方で、マクロの動きというものもある。先ほどミツエさんの方からご紹介があったとおり、UNWTO(世界観光機関)の予測によりますと、2018年の観光人口は14億人で、これが2030年には18億人になる。これはほぼ確実になるでしょう。現状、日本の国際観光収支は極めて大きいものがあります。411億ドルです。これは世界9位の水準で、現状で日本の半導体電子部品の輸出額を上回っていて、極めて大きな産業セクター、経済セクターでもある。こういう状況の中で、マクロの動きと共に、このミクロの「金沢でどうする」「京都でどうする」という問題も考えていかなくてはいけない。こういうことになろうかと思います。

  つい1カ月ほど前、北海道のニセコで世界観光大臣会合が初開催されました。日本ではそれほど大きく報道されませんでしたが、これはすごく大きなことだと思います。この世界観光大臣会合の中で、オーバーツーリズムという問題が大きく取り上げられた。訪問者、地域社会の双方に恩恵のある観光マネジメントを進めるということが宣言文に書かれたということも、やはりすごく大きなことです。

 実は、こういう動きは既に世界的に起こっておりまして、先ほどご紹介したUNWTOでは、昨年、まさに「オーバーツーリズム(観光過剰)」というタイトルの報告書を公表しています。本来であれば、UNWTOは観光を推進する振興する機関であったと思いますけれども、持続可能な観光のために、このオーバーツーリズムの問題というものを正面から捉えざるを得ない状況になってきている。

 小林さんが事務局を務めていらっしゃる観光庁の方でも、持続可能な観光先進国へ向けてということで本部が設置されたということです。そして、「持続可能な観光先進国に向けて」という報告書と先進事例集が発表されています。日本も既にこういう手を打っているという状況にあるわけです。
 ちなみに、論文検索をしてみますと、「オーバーツーリズム」というキーワード自体は、既に1970年くらいから世界的には使われはじめていました。日本語にすると「観光公害」という言葉になりますけれども、実は日本でも1970年代からこの言葉は使われております。今のところ、私が調べた中で一番古い用例では、実は民俗学者で文明学者である梅棹忠夫さんが、1970年に京都で講演をされていまして、その中で「観光公害」という言葉を使っていらっしゃる。これが恐らく一番古いのではないかというふうに思います。今から半世紀前のことです。ちなみに、この中で梅棹さんは、「市民はそれら観光客のために犠牲になっている面も出てきているのではありませんか。市民不在の都市だ」と、こういう言い方で観光公害というものを訴えられています。もちろん、当時の京都は今の状況に比べればまだ全然ましといいますか、いわゆる観光公害というものが今日的な状況になってはいないわけですけれども、半世紀前に、既にそういうことを予言されていたということになるかと思います。

 観光マネジメントということを考えた場合、二つの視点で同時に考えていかなくてはいけないだろうというふうに思うわけです。日本で言うところの京都が代表的な事例であるように、ある特定の観光地、特定の都市、またさらに特定の地区におけるマネジメントというミクロ的な側面がありますけれども、一方で、政府としては2020年に4000万、2030年6000万という大きな政策目標を掲げています。
 従って、観光客自体はざっくり言うと今の倍になっていくわけですね。こういう状況の中で、個々の、ミクロの観光マネジメントというものを考えていく必要があるだろうということです。

 さすがにこの2030年6000万人というのはかなり大きな数字になってくるわけです。2018年が3000万ちょっとぐらいという数字でしたでしょうか。ですから、大体倍ですよね。倍と考えると、結構大きいですよね。
 こちらはご案内のとおり、外国人の観光消費額も、その時点で言うと15兆円になると。延べ宿泊数も1億3000万人泊、リピーター数も3600人、非常に大きな数字になってくると。大体この年間6000万人外国人が来るという水準は、現在の世界でいうとイタリア並みぐらいになります。ご案内のとおり、イタリアというのは世界的に見ても観光大国ですよね。さらに、日本との違いで言うと、イタリアはEUに地続きである国で、島国の日本が現状のイタリア並みになるというのは、これはこれはすごいことだと。
 それで、この6000万という数字は実は本当にすごいことで、日本は島国ですので、現在日本に来られている外国人のほとんどは、当然ですけれども空港から入国してくるわけです。一部、国土交通省の方でクルーズの振興もされていますけれども、まだ数字としては大きくありません。2018年の数字だと思うのですが、97.4%は空港経由で入ってきています。ですので、この趨勢でいくと、基本的に6000万人という数字のほとんども、日本の空港がそれぞれ入国の担い手になるということになるわけです。

 ただ、現状、この数字はざくっと今の空港別の入国者数になっていますけれども、成田空港、そして関西空港、それから羽田空港、この三つの空港が、かなり突出して訪日外国人を受け入れているという状況になっています。
 その他、拠点空港として福岡、那覇それから中部、新千歳があるわけですけれども、このあたりの空港が、現状さまざま、もっと受け入れを増強しようという動きになっております。例えば、一番典型的なのが羽田かもしれませんけれども、先ほどハワイ便もこれから増えるというお話がありましたけれども、なぜ増えるのかというと、今まで禁じ手といわれていた住宅地の上空も飛ばそうと。こういう手を打ってキャパシティを増やしているという状況になっています。そして、成田も現状の2倍にするという構想を、今持っているわけです。

 ただ、先ほど言ったとおり、日本の政府全体の目標は、ほぼ2倍に持っていこうと数字ですから、こういう拠点空港は、多分、マストで2倍にしていかないと、外国人の受け入れは達成できないということになりますよね。現状から各空港がどれくらいキャパシティを増やしていくのかという構想を入れ込んでいって、残りは他の地方空港が担ってみるという仮の試算で計算してみますと、これは単純な計算なので一つの試算でしかないのですけれども、拠点空港だけではやはり担い切れない。では、その部分がもし他の地方空港に来てしまうと、地方空港は元々母数が少ないですから、かなりの現状比の倍率を担っていかないと、この6千万という数字にならないという試算になってしまうのです。そういった意味で言うと、現状受け入れている成田、関空、羽田そして拠点空港は、最低は2倍の訪日外国人を受け入れていただかないと、なかなか全体の目標を達成できないということになるわけです。

 仮に地方空港に6倍来てしまうとどういうことなるかというと、小松空港は2018年の訪日外国人の入国者数は8万6969人でした。これを6倍すると52万7855人というとんでもない数字になるわけです。これは一つの試算ですけれども、でも少なくともこれは倍にはなるわけです。政府目標が倍ですから。そう考えると、この金沢で観光マネジメントと、そして都市環境の維持と調和ということを考える上でも、大きな、マクロでは増えていく中で観光マネジメントを考えていくという、マクロとミクロの両方の視点を同時に持っていないといけないということになっていこうかというふうに思っております。

 これが一つ大きこうした中で、一方で、羽田も成田もかなりキャパシティがいっぱいになりつつあるという現状があるわけですから、むしろ積極的に地方空港はこれに立ち向かっていくといいますか、受け入れていくべきではないかということで、全国の政令指定都市の市長会では、観光先進国実現に向けた提言として、「プラス・トーキョー」というキーワードを使って、「『プラス・トーキョー』をはじめとする地方観光の強化へ向けて」という報告書を、昨年、国土交通相等に提出しています。
 このプラス東京というのは一体何なのかというと、先ほども少しご紹介したとおり、日本に来る訪日外国人は、基本的に空港経由で来ている。しかも、実はその大半が成田・羽田という首都圏空港から入国しているわけです。普通、この趨勢上で考えると、いったん成田・羽田という両空港から東京に入国した人を、東京からいかに外国人を引っ張ってくるかという発想になるのですけれども、先ほどご説明したとおり、もはやそれにも限界はあるだろうと。そう考えると、むしろ地方空港が積極的にこの訪日外国人の受け入れの担い手になろう。そして、地方都市、または地方都市を中心とする地方圏において長期滞在していただこうと。そして、もしその観光客が東京に行きたいと言うのであれば、どうぞ東京に行かれてください。東京は日帰りが十分できますよ。何なら東京に1泊ぐらいされてもいいですよと。こういう「プラス・トーキョー」というのが、この日本の国土構造に非常に合った観光戦略ではないかという提言を、全国の政令市長会はしているわけです。
 実は、この「プラス・トーキョー」という言葉には元がある、若干パクりの言葉になっています。この元の言葉は何かというと「ロンドンプラス」という言葉なのですね。イギリスのロンドンです。これは2012年にロンドンオリンピックが開催されたときに、日本の観光庁に相当するVisitBritainというイギリスの観光庁が、オリンピックのときにはヒースローを経由してロンドンにたくさん人が来るよねと。でも、それはロンドンだけで帰ってしまってはもったいないでしょう。ぜひロンドンからプラス1都市またはプラス2都市、イギリスの地方も回ってもらおうということで、「ロンドンプラス」という観光施策を打ち出したのです。でも、日本でやる場合には「トーキョープラス」ではなくて、ご案内のとおり、日本は内陸圏をのぞいてほぼ各県に空港が整備されています。しかも、そのほとんどの空港から足は短いものが多いですけれども国際線が飛んでいます。こういう状況を勘案すると、むしろ「プラス・トーキョー」という形で、地方が訪日外国人受け入れの場になっていくことが、より現実的な政策ではないかと。こういうことがこの全国の政令指定都市の市長会の提言になっているわけです。
 こういう中で、多分、金沢も、金沢はまだ政令指定都市という形にはなっておりませんが、恐らく小松空港等々と連携して積極的に訪日外国人を受け入れていくという流れの中で観光マネジメントを考えていくことが必要になっていくのだろうと思うわけです。

(米沢) ありがとうございました。ここで、京都にお住まいの佐々木フェローにご発言を願いたいと思うのですけれども。よろしくお願いします。

(佐々木) 金沢から離れて、大体20年京都に住んでいて、20年前の京都は、観光産業が結構苦境でした。例えば、修学旅行生が沖縄に取られたりしていましたのでね。そのとき、京都市政は観光5000万人構想を出すのです。それで、それを今の門川市長が引き継ぐのですが、私は「ちょっと京都らしくないな」と言ったのです。5000万というのは、まあ観光統計はいい加減だということは前から分かっているので、いくらでもアバウトに計算できるのだけど、要は、量ではなくてクオリティの問題を出さなければ駄目だと。先ほどから出ていますよね、質の高いツーリストをレスポンシビリティツーリストと呼ぶと。そういう次元の違う話に持っていかないと、京都は文化都市らしくいない。そういうことをずっと言っていました。それがやっと最近市長も分かったようで、それでいろいろな抑制に乗り出すと。でも、少し手遅れのような気がします。
 先ほどからバルセロナとかベネチアとか、私もよくイタリアへ行きますし、バルセロナにも行くのですが、バルセロナとベネチアは違うのですよね。ベネチアはもう観光都市で、観光で食っている。先ほどのハワイと同じです。だから、観光セクターがどれだけ頑張るかなのだけど、バルセロナはそうではなくて、文化都市なのです。創造産業があるし。だから、市民の感じ方も、やはり市民の生活の質が落ちてまで観光客を入れる必要がないという矜持があるのです。
 私は、ユネスコ創造都市ネットワークにずっと関わってきていますけれども、バルセロナもユネスコネットワークです。それから、先ほど話があったゲントも同じで、こういった都市は基本的に文化の多様性や、あるいは文化の創造性で世界にしっかりしたポジションを確立して、そして観光も一緒にして経済セクターにする。こういうことだと思うのです。そのあたり、金沢市はどういうポジションを取るのかということを、もう一度改めて考えないといけないと思います。
 実は山出前市長と私はこの問題をしゃべったことがあって、もう15年ほど前です。観光客に見せるための都市をつくらないようにしようと。金沢はディズニーランドとかそんなのではないのだから、やはり文化を楽しむ、しっかり金沢の文化の奥深さを分かってくれる人に来てもらう。こういう届け方をしないと、ともかく観光は産業でブームだからどんどんやろうというのはまずい。ただし、一方で、先ほど観光消費額が出ましたね。これはものすごく面白くて、やはり東京と大阪が多いわけです。これは爆買いですよね、はっきり言って。特に大阪などははっきりしていて、ぱっと来て爆買いして帰った時期のデータが出ていると思います。今は少し収まりましたけれども。それに対して京都や金沢というのは、文化を楽しむ場所であって爆買いをする場所ではないので、観光消費額というものをもう少し奥深く捉え直す必要がある。ただ土産物とそれから宿泊といったものだけではないと思います。
 それから、ホテル税ですね。これはアメリカの場合は、都市でいくと例えばサンフランシスコのホテル税は8割近く文化に回っています。やはり文化施設が大事だから。それから、先ほど話に出たように、ハワイの場合は自然保護です。これはハワイの観光地の特徴ですよね。では、金沢の場合、ホテル税をどこに回すか。京都も最近は文化財の修復に回していますが、金沢ではこのホテル税の税収をどうやって質の高い文化に回すかということが、大きいテーマになってくるのではないかと改めて思いました。
 それから、少し先の話ですが、結局、これから日本では競争力のある産業が減ってくるので、それでインバウンドでGDPを稼ぐという発想なのですが、そもそもツーリズムというのは一時的滞在ではないですか。でも、もう一歩、移民というものがあるでしょう。これはずっと滞在するわけですよね。両方の問題があるのです。つまり、日本は日本国籍を持っている人たちは減っていくのだけど、そうでない移民・移住を大規模に広げるということをすれば、人口は維持できますよね。一時的な滞在者、ツーリストをもう少し長く滞在させるとか、そのあたりの総合政策をきちんと出さなければいけないのではないか。つまり、人口政策ですよね。だから、ツーリズムという議論だけしていていいのかなというのは、いつも引っかかっています。これは別にすぐに答えが出る問題ではない。そして、皆さんのデータ。今日は5人の発表があったので、このセッションは一番たくさんの情報があってとても楽しかったです。どうもありがとうございました。

(米沢) 今、佐々木先生が「文化を楽しむ場所だ」とおっしゃられました。明日は提言につなげないといけないのですけれども、先ほどおっしゃったように季節の分散化、時間の分散化、場所の分散化、京都は何かスマホのようなもので混雑を知らせているらしいのですけれども、やはり基本的にはマネジメントしないといけないような、そうでないとうまく分散化しないと思っています。そうするには条例とかいろいろなものが必要になってくるので、どうしてもそういうガバナンスをかける組織が必要になってくるのではないかなという気がしました。先ほどミツエさんがおっしゃったようなツーリズムオーソリティまではいかないにしても、ある程度権限を持って、きちっとした新しい条例を作るようなしっかりとした組織が必要かなというふうに思っていまして、そのあたりを明日、討論の中で述べさせていただければと思います。長時間、本当にありがとうございました。これで第3セッションを終わらせていただきます。

お礼の言葉

米沢 寛 (金沢創造都市会議開催委員会実行副委員長)

先ほど山出前市長のお話が出ましたけれども、創造都市会議の中で、やはり観光客がたくさん来るまちの市民は、寛容性を持たないといけないという議論があったと覚えています。そのときに、前山出市長が「いや、来る人もまちを知った上で謙虚さを持ってほしい」としっかりおっしゃっていまして、今こそそういう話なのかなと思います。寛容性と謙虚さ、それらをうまく合わせると、持続可能なまちになるのかなということを改めて感じさせていただきました。1日目終了の挨拶とします。明日もよろしくお願いします。

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第一日目 12月5日

第二日目 12月6日

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