第9回金沢学会

金沢学会2018 >基調スピーチ

開催概要

■テーマ 「熟成する金沢―文化都市を深める」開催にあたって

 

 

 

 

 

金沢創造都市会議開催委員会
会長兼実行委員長
福光松太郎氏

 金沢創造都市会議開催委員会が主催しているこの会は、市民に開いている創造都市会議と、関係者だけが集まって議論する金沢学会と交互に開催しています。今年は第9回金沢学会です。石川県と金沢市と金沢経済同友会で構成しており、昨年第9回の金沢創造都市会議を開催しましたから18年目の継続開催になります。
 これまで、幾つもの提案・提言をして実現に結びついたこともあります。ちょうど昨日、「東アジア文化都市2018金沢」が閉幕しました。この件も欧州文化首都から考えられて、佐々木先生や太下先生が文化庁と一緒になって2014年に仕組みを考えられたのですが、当時から金沢がエントリーすべきだという話をしてきました。創造都市会議においても2〜3回にわたって、この東アジア文化都市へのエントリーを提言してまいりました。ようやく今年の開催が決まり、中国のハルビン市、韓国の釜山広域市と金沢市の3都市による東アジア文化都市開催に至りました。私は、提案側の一人として開催の実行委員長を拝命していましたが、280日間にわたり、150の事業、60万人を超える参加を頂き昨日閉幕しました。実は、まだ最後の事業の「工芸×霊性」という展覧会が9日まで、しいのき迎賓館1階ギャラリーで開催されています。興味のある方はぜひご覧になっていただきたいと思います。
 今回の金沢学会の開催概要を説明させていただきます。総合テーマを「熟成する金沢―文化都市を深める―」としました。2002年の第1回金沢学会の議長を、当時国際日本文化研究センターの所長だった川勝平太先生にお願いして記念講演していただきました。そのときに川勝さんが出されたキーワードが「美しい金沢」でした。この「美しい」という言葉は、しなやかなどという総合的な意味で、対立概念は「強い東京」とおっしゃっていました。つまり、東京は強い。しかし、金沢は美しい。どちらがサステナブルかというと、美しい方ではないかということもお話しになったと思います。今日、東京が「強い」という感じがだんだん減ってきているような気もしますが、金沢も「美しい」という言葉をもう少し深く考えなければならなくなっているとも思うわけです。
 日本文化はいつも二つの要素からできているという、「日本文化デュアル論」を松岡正剛氏がずっと指摘しておられ、『日本という方法』という本でまとめておられます。つまり光と影、あるいは光と闇、あるいは街中と川向こう、現世と幽界など、目に見えていることと隠れていることです。金沢は今、こういう伏線を失っているのではないか、光ばかりになって影や闇がなくなっているのではないか、つまり魅力を失いつつあるのではないかということを、金沢青年会議所が先日主催された「金沢文化サミット」で講演されたときにお話しになりました。このことはまた明日、青年会議所からもお話があるかもしれません。
 「美しい」という言葉の中には、しなやかであることはもちろんですが、例えば色気や残り香など、心を引かれる要素がとても重要だと思うわけです。今の金沢は品格というような光は随分満ちてきましたが、もう一つの心引かれる要素が足りないのではないかという話です。
 「熟成」という概念はお酒によく使われます。ウイスキーやワイン、日本酒もそうですが、お酒の味わいや香りが時間をかけて深まっていくことを、一般的にお酒では熟成と言っているわけです。金沢のまちは文化都市を深めていかなければなりませんので、大人のまちとして、あるいは色気のある文化都市として、さらに熟成を重ねる必要があるのではないかと思うのです。
 お酒の世界では、熟成させてみたけれどもうまくいかなかったときは、その酒が「ひねた」といいます。これは非常に悪い言葉ですが、歴史があるまちで、ひねてしまったまちもたくさんあるのではないかと思います。このような観点から今回の金沢学会のテーマは「熟成する金沢―文化都市を深める―」としたわけです。金沢をどのようにうまく熟成させていくか、世界に通用する魅力ある文化都市にするにはどうしたらいいか、みんなで議論して政策や方法が見いだされることを期待したいと思います。

 今日は1日目は、セッション@で「まちを熟成させる」というテーマで議論していただきます。メンバーは、水野一郎さんがコーディネーターで、大内浩さん、竹村裕樹さん、田村大さんに出ていただきます。まちに関することとしては跡地の問題があります。これは日銀や、県立図書館跡地など本多町界隈、それから大手町のNHK跡地の話もあります。また、金沢市で、コンベンションホールを目指して金沢歌劇座を直していこうと目論見ましたが、うまくいっていないという課題もあります。金沢にそういう素晴らしい芸術文化ホールはないので、これも一つの問題です。それから、金沢城から尾山神社に、昔あった鼠多門橋が復元されることになり、工事が始まっています。それが出来上がると、金沢を回遊できる素晴らしい回路ができます。この辺のことが今発現している事象です。古いまち並みや町家がどんどん変わっていることをどう考えるかも重要な問題だと思います。
 セッションAは「ものづくりを熟成させる」というテーマです。コーディネーターは宮田人司さん、パネリストに三石晃生さん、米倉千貴さんに来ていただいています。工芸は金沢のものづくりの中心ですが、工芸を広くとらえて、これからのものづくりをどう考えていくか、そして新しい技術や新しいことを。どのようにものづくりと対峙させていくかということなどを議論していただきます。
 セッションBは「夜を熟成させる」というテーマです。コーディネーターに佐々木雅幸さん、それから太下義之さん、松岡恭子さんに来ていただき、議論していただきます。今、ナイトカルチャーというのが、都市の活性化の方法として非常に期待されていますし、実際に金沢のまちはインバウンド、訪日外国人の増加に伴って、夜を楽しみたいという要望が大変高まっています。金沢の場合はどんなふうに考えるか、ナイトカルチャーにどう対応していくかが大きな問題です。以前から、劇場都市の問題や食文化のまちであること、あるいは伝統芸能がもう少し気軽に見られないかなど、さまざまな議論があります。
 2日目は全体会議を開き、今年は大内浩さんに議長を務めていただきながら、山野市長をお迎えし円卓で議論していきたいと思います。最後に「金沢学会2018宣言」を採択します。皆さんどうぞよろしくお願いいたします。

 「熟成」という概念はお酒によく使われます。ウイスキーやワイン、日本酒もそうですが、お酒の味わいや香りが時間をかけて深まっていくことを、一般的にお酒では熟成と言っているわけです。金沢のまちは文化都市を深めていかなければなりませんので、大人のまちとして、あるいは色気のある文化都市として、さらに熟成を重ねる必要があるのではないかと思うのです。
 お酒の世界では、熟成させてみたけれどもうまくいかなかったときは、その酒が「ひねた」といいます。これは非常に悪い言葉ですが、歴史があるまちで、ひねてしまったまちもたくさんあるのではないかと思います。このような観点から今回の金沢学会のテーマは「熟成する金沢―文化都市を深める―」としたわけです。金沢をどのようにうまく熟成させていくか、世界に通用する魅力ある文化都市にするにはどうしたらいいか、みんなで議論して政策や方法が見いだされることを期待したいと思います。
 今日は1 日目は、セッション@で「まちを熟成させる」というテーマで議論していただきます。メンバーは、水野一郎さんがコーディネーターで、大内浩さん、竹村裕樹さん、田村大さんに出ていただきます。まちに関することとしては跡地の問題があります。これは日銀や、県立図書館跡地など本多町界隈、それから大手町のNHK 跡地の話もあります。また、金沢市で、コンベンションホールを目指して金沢歌劇座を直していこうと目論見ましたが、うまくいっていないという課題もあります。金沢にそういう素晴らしい芸術文化ホールはないので、これも一つの問題です。それから、金沢城から尾山神社に、昔あった鼠多門橋が復元されることになり、工事が始まっています。それが出来上がると、金沢を回遊できる素晴らしい回路ができます。この辺のことが今発現している事象です。古いまち並みや町家がどんどん変わっていることをどう考えるかも重要な問題だと思います。
 セッションAは「ものづくりを熟成させる」というテーマです。コーディネーターは宮田人司さん、パネリストに三石晃生さん、米倉千貴さんに来ていただいています。工芸は金沢のものづくりの中心ですが、工芸を広くとらえて、これからのものづくりをどう考えていくか、そして新しい技術や新しいことを。どのようにものづくりと対峙させていくかということなどを議論していただきます。
 セッションBは「夜を熟成させる」というテーマです。コーディネーターに佐々木雅幸さん、それから太下義之さん、松岡恭子さんに来ていただき、議論していただきます。今、ナイトカルチャーというのが、都市の活性化の方法として非常に期待されていますし、実際に金沢のまちはインバウンド、訪日外国人の増加に伴って、夜を楽しみたいという要望が大変高まっています。金沢の場合はどんなふうに考えるか、ナイトカルチャーにどう対応していくかが大きな題です。以前から、劇場都市の問題や食文化のまちであること、あるいは伝統芸能がもう少し気軽に見られないかなど、さまざまな議論があります。
 2 日目は全体会議を開き、今年は大内浩さんに議長を務めていただきながら、山野市長をお迎えし円卓で議論していきたいと思います。最後に「金沢学会2018 宣言」を採択します。皆さんどうぞよろしくお願いいたします。

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第一日目  12月6日

第二日目  12月7日

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