第7回金沢学会

金沢学会2016 >基調スピーチ

開催概要

■テーマ 『金沢ネクスト・ステージ』

文化立県をめざして、新しいステージを。

 

 

 

金沢創造都市会議開催委員会
副会長兼実行委員長
福光松太郎氏


 今日は大勢のご参加を頂きましてありがとうございます。また、大変ご多用の中、ご遠路から多くの講師の皆さまにご参加を頂き、心から感謝を申し上げます。今、安宅代表幹事からごあいさつを申し上げました。その中にありましたように、1年ごとに創造都市会議と金沢学会と名前を変えていますのは、金沢学会のときは一般市民の方が入っていませんが、創造都市会議のときは一般市民も参加しているという差があります。今年は金沢学会の番です。
 それを通算すると、今回が19年目となります。これまでに多くの行政への提案、まちづくりへの提案を行い、随分たくさんの提案を実現しています。代表幹事からお披露目がありましたように、ユネスコの創造都市へのエントリーもこの場から出たことです。その後、選ばれてからユネスコの創造都市の世界会議を金沢に誘致することもここから提案し、昨年5月に実際に行われました。
 それからさまざまなまちづくり、具体的なまちづくりも随分実現していったわけです。細かい話になりますが、例えば中心部の兼六園の向かい側の旧県庁の所に、非常に広い面積の芝生部分があります。その部分とその前の広坂通りの照明についても、この会議から提案して照明部材、照明器具などの社会実験を行いました。その成果として、現在の照明に落ち着いています。夜間照明の推進も随分と声を大にしてやっています。他にもオープンカフェをもう少し自由にできるようにしてほしいということで、これもその大通りの歩道を使って社会実験を2回行いました。その結果、自由にそういうものができるような風潮と行政の認識ができました。そのような大きいところから細かい話まで、いろいろと提案したことを具体的にしています。今回もぜひ、今日と明日の全体会議を含めまして、具体的な提言を行い、ぜひ実現することができればと思います。
 今回は総合テーマを「金沢ネクスト・ステージ」としました。これは簡単に言うとポスト新幹線という意味でもあり、もう一つは2020年のオリンピック・パラリンピックに向けての具体的なタイムスケジュールに入ったことも含めてのネクスト・ステージです。今日討論していただきますことで、ぜひ金沢のネクスト・ステージの準備になりますようにと思っています。
 それぞれのセッションの設定についての思いをお話しし、概要説明にしたいと思います。セッションの1番目が「金沢的MICE(マイス)の推進」です。MICEはご承知のように、いわゆるコンベンションや会議などを開いてその地域に貢献する、あるいは経済波及効果をもたらすということです。代表幹事のお話にありましたように、昨年新幹線が開業してから在来線の乗降客数に比べて約3倍の方々が金沢駅に到着されたり、あるいは金沢駅から乗っていかれたということです。それでまちの中はかなり混乱したわけです。
 身近な例を申し上げると、地元の方がいつも行くおでん屋さんに行って、いつものようにドアを開けたら、見たこともないアルバイトがいて「お客さん、予約はありますか」と言われ、ものすごく腹を立てて帰ってきたことが実際ありました。そのような類いのことがたくさん起きて、観光というのは誘客的というか、人にどんどん来てもらうという方針でいいのかということです。
 新幹線が開通する前まではたくさん来てもらわないと大変だということで、官民挙げて一生懸命という考え方もあったのですが、ふたを開けるとあまりにたくさん来られたということもありまして、観光立県ではなく文化立県という言葉がもう一回出てきているわけです。金沢経済同友会からも知事に対してそういう提言をしまして、もう一回考え直そうということになりました。
 しかし、どんどん来訪される方を来ないようにするわけにはいきません。そういう話とは違うわけです。ですから、観光立県と文化立県は二律背反にするのもなかなか難しいのです。そういう意味でMICEは、ちょうどハイブリッド型のタイプではないかということです。金沢、石川にとってはコンベンションをもっとうまく活用し、非常にセンスの高いことができる地域にしていくことが一つの方法ではないかということで、セッション1の設定の基本的な考え方はそういうところにあります。
 また、サッカーではツエーゲン金沢、野球ではBCリーグの石川ミリオンスターズ、バスケットボールは金沢武士団(サムライズ)ということで、今日は金沢武士団の中野秀光社長に来ていただいていますが、地元のプロスポーツがそろいまして、そういう意味ではスポーツコンベンションが非常に重要な役割になってこようとしています。この街でそういうことができるかということも非常に興味のあるところです。
 それから、まちの中に多目的なコンベンション施設のようなものがあった方がいいことをずっと申し上げてきました。金沢市もそういうものを造ろうということになっています。先般の金沢市長と金沢経済同友会との意見交換会におきましては、金沢歌劇座が本多町の金沢21世紀美術館の隣にあるのですが、そこを中心にそういうものにしてはどうかという意見を出しました。それも一案として市の方でもお考えを進めている最中です。今日はうちのスタッフに建築屋もおりますので、その場所にそういうものを建てるとこんな絵になるということもお披露目したいと思います。いずれにしても、金沢的なMICEとは何か、どうしたらそうなるかということをぜひご議論を頂きたいと思います。
 セッションの2番目は「KOGEI(工芸)の世界展開」です。「KOGEI」と書いて、「―石川・金沢を拠点に―」というセッションにしました。これは、ごあいさつにもありましたように、2020年3月に東京国立近代美術館工芸館が金沢に移転することが決まっています。地方創生という意味合いからそうなりましたが、9月に宮田文化庁長官をお招きしたシンポジウムにおきましても、はっきりと国立工芸館という名前で移転し、2020年3月にはこれを造ることを受けまして、県や市で盛んに準備を進めています。
 ちょうど数年前から、この会議でもオリンピックに向けての文化プログラムの重要性を議論してまいりました。いよいよその非常に具体的で大きな出来事が起ころうとしています。昨年は京都、今年は東京で行われました「21世紀鷹峯フォーラム」が、来年は金沢で開催されます。これは有機的で規模の大きい工芸のイベントであり、その準備も始まったところです。今日は林田英樹先生に来ていただいておりまして、主催をされていますので、そういうことも含めて議論していただければありがたいと思います。
 2018年には「東アジア文化都市」も金沢で開くべきだと提案し、2018年の日本国内の開催都市は金沢市となることが、市長の文化庁へのプレゼンテーションによって決まりました。その準備も進めています。また、国のイベントとして2020年には「国際工芸サミット」が金沢で開催されます。その前に富山、福井で開催され、最後が石川になる予定です。随分工芸のことがたくさん続くわけで、当地の文化プログラムは工芸が中心になるかもしれませんがどうすればいいか、工芸館の移転でわれわれはこの地に何をもたらすべきか、あるいは世界にどのような機能を果たすべきか、世界への発信をしっかり考えておかなければならないということで、このセッションをつくりました。
 なお、漢字で「工芸」と書かず、「KOGEI」としています。漢字の工芸は英語で訳しますと、クラフトと訳されます。クラフトと訳しますと、英語圏の方々は土産物まで含んでクラフトと考えておられるようで、非常に困ることが多いのです。従って、工芸という言葉自体をアルファベット化して、いわゆる世界用語にしたいという思いです。そのようなことも考えています。それから、世界の主要都市には工芸のマーケットがあります。ぜひ金沢でも世界に開かれたアートマーケットを作れないかというのが一つの課題です。KOGEIの世界の発信に必要なソフトウエアをこの分科会で探っていただければと思っているところです。
 セッションの3番目は「AIが支えるまちづくり」です。これは、「愛が支えるまちづくり」でもいいのですが、そういうロマンチックなまちづくりを人工知能(AI)が多分支えるのだろうということで引っ掛けてあります。「AIが支えるまちづくり」ということで。徳井直生社長に来ていただいています。AIは今どこまで行っているのか、ニュースでは囲碁の名人に勝ったり、ロボットだけで運営し始めたホテルがハウステンボスにあるなど、さまざまなことも聞いております。近未来としてどこまで実現するのか、またそれをまちづくりにどのように役立てることができるか、創造都市金沢ならではの人工知能との付き合い方は何かについて議論していきたいと思っています。ぜひ、今後の大きなテーマをここからも出していただければと思います。
 それから、今日は分科会が三つ終わった後、有志の方々と一緒にレセプションを行います。この会のレセプションは必ず、その年に新しくできた空間で行うことと定められています。これがなかなか大変なのですが、今年は橋場町に昔から建っていた仏壇センターという古いビルを見事にリノベーションしてできたシェアホテルの1階を使って、レセプションを行います。古い町並みにできた空間を味わいながら、お酒を飲みながら議論していただければと思います。
 明日はいつものように10時から全体会議で、山野之義金沢市長にも入っていただきます。大いに議論を深めていただき、直接的に提言もしていただければ幸いです。結びに「金沢学会2016宣言」を採択させていただき、今回の金沢学会をお開きにしたいと思っています。今日、明日と長丁場ですが、どうぞご参加のほど、また先生方のご討議のほど、よろしくお願い申し上げます。ちょっと長くなりましたが、概要説明を行いました。ありがとうございました(拍手)。


 

創造都市会議TOP


第一日目  12月8日

第二日目  12月9日

Copyright
金沢創造都市会議